「新選組!! 土方歳三 最期の一日」 感想文 ガラマニ作

06/1/3(火)「待たせたな。」

待ったよ、トシ。あなたに、また会える日を、どれほど待ちわびたか、語り尽くせないほど、待ったよ。あぁ、待っててよかったよ、トシ。土方歳三…今日、あなたに、再会出来て、そして今日、あなたと…お別れなのだね。

番組を見終わった時、俺は、放心状態となり、言葉を発することが出来ず、感想文を、すぐに書き始めることも出来ず、ただただ、「土方歳三の壮絶な最期」が、焼き付いた眼球から、落涙するのみだった。

この感想文の「最期」は、視聴直後の、俺の気持ちを記すのみにて、結びとしている。

泣いたとか、感動したとか…そんな、ことは、当たり前、だろ…この文の「最期」は、これ、しか、書けない、書きたくないというところで、終わっている。

筆者ガラマニは、1/1のBSハイビジョン放送で、番組を見、1/3、NHK総合での本放送後に、この感想文を発表した。

NHK大河ドラマ視聴歴、三十有余年の俺だが、通年の本編が、好評だったゆえに、続編が作られたことなんて、かつてなかったと記憶している。

2004年度の「新選組!」は、色々な意味で、大河の歴史を塗り替えた。コメディであること。これほど笑わされた大河は、なかった。型破りであること。劇中で、田中邦衛のものまねをしたヤツがいた。歳三がやったのだ。主題歌字幕スーパーつきであったこと。ラーラーラー愛しきー友はいずこにーって、みんなが歌った。紅白でヌッツォが歌ったのだ。史上に名高くない、一登場人物の死を、一回、45分間かけて描いた。山南敬助、「友の死」だ。あの時、日本国中が、泣いたのだ。震撼したのだ。知ってた?山南敬助っていう人が、日本にいたことを。徳川家康でもなく、聖徳太子でもなく、やまなみなにがしの死を、日本国中の老若男女が、悼んだことなんて、あったかい?なんて凄いのだろう、このドラマは!なんて素晴らしいのだろう、大河ドラマってものは!

「新選組!」は、終始、主人公・近藤勇の目線で描かれ、最終回は、近藤の処刑で終わった。我々視聴者は、逝く近藤を見送る、彼の盟友、土方歳三と同じ気持ちで、2004年を見送ったのだった。

そして、一年後の、今日。2006年1月3日。我々は、彼が帰って来るのを待っていた。そう、北海道は函館の、海岸で、息をひそめて、待ってたんだよ、我々は。木陰に隠れ、敵・官軍の兵糧を奪うため。彼が、来てくれるのを、待っていた。まだかな。早く、来てくれないかな。我々が、大好きな、あの人。頼もしい、強い武士。洋装の、さむらい…時は明治2年、もはや元号は変わり、幕末の息吹は遠く、遠く…官軍は函館を取り囲み、我々幕府軍は、五稜郭に追いつめられている。食べ物が、ろくにないんだ。でも、あの人は言ったんだ。「だったらよ、敵の酒、ブン取ってやろうぜ。な。」って。おう、おもしれぇ、やってやろうじゃんっていう気に、なったんだ。あの人が、そう言ってくれたから。彼の名は。

歳「待たせたな。」

新選組副長、土方歳三。

只今見参!!

再来したトシは、純白の襟、きらきらしく、黒い洋服のすそ、たなびかせ、軍靴のひづめ、闊歩さす、そして、カミソリのまなこ、睨む切れ味そのままに、抜刀するも、勇ましく!見参、けんざぁん!

ヤマコーこと、山本耕史氏演ずる土方歳三は、現存するホンモノの写真にソックリであるばかりでなく、ホンモノの霊が憑依している。「新選組!」の時から、霊にとり付かれたまま、五稜郭まで行ってしまった。あまりに、凄い。背筋に戦慄が走る、成り様だ。カラーテレビ(死語)に映し出されたヤマコーは、白黒写真から飛び出した、ホンモノの土方歳三だ。

土方は、今日という日、自分の死を覚悟していた。数少なく残った、新選組の仲間たちに、函館の民と、誠の旗を守れと命じた。最も若い隊士、市村鉄之助に、手紙と写真を託し、多摩の実家に届けろと命じた。嫌がる鉄之助。自分も、土方さんと一緒に戦います!叱り付けるトシ。

歳「だから辛い仕事だと言ったじゃねえか!」

みんな、分かった。土方さんは、今日、死ぬ気だと…島田魁が、「いやだ!俺は土方さんと戦いてぇんだよぉ!」って叫んだ時点で、俺は、こみ上げるものに、耐え切れなかった。

土方の覚悟を見抜いた人物は、新選組の仲間以外にもいた。玉子の白みで、お髭のカールをキープしている、トランプの絵札のクローバーのキングみたいな顔のやつ、榎本武揚である。し、しかしぃ…土方もたいがい写真ソックリだけどさ、榎本もソックリだよ。トランプに。いや写真のホンモノに。

オランダ帰りの男、函館幕府軍総裁・榎本武揚は、くるりんお髭にオールバック、背広に軍刀携えて、サンドウィッチつまみながら、グラスに注いだ、赤いぶどう酒を飲むやつだ。ナンノこと、南野陽子たんが女将をやってるそーゆーお店に、幕府軍幹部を集め、榎本は発表した。幕府軍は、敵・官軍に降伏すると。さあー怒りましたよ、土方歳三が!「榎本に会わせろ!」詰め寄るトシを、あしらおうとする、陸軍奉行・大鳥圭介。

本題とぜんぜん関係ないが、劇中に登場したサンドウィッチの、時代考証がしっかり出来てるのに感心した。(ホンマに関係ないな!w)榎本が言っていた通り、サンドウィッチは、当時、エゲレスで流行した、トランプのゲーム、ブリッジの競技中に、片手でつまめるようにと、考案された料理だというのが通説である。具は、きゅうりとチーズだけなのが初期の型で、パンは四角形に切るのだが、重要なのは大きさだ。フィンガーサイズと言い、親指と人差し指と中指の、指三本でつまめるサイズこそ、この時代、日本に伝承された、エゲレススタイルのサンドウィッチなのだ。三角形のでっかいサンドウィッチは、後年の発展形で、この時代にはないはず。榎本が、土方に勧めていたサンドウィッチは、この点をチャンと踏まえており、サンドウィッチ大好き人間でもある俺は、満悦である。

この続編、「新選組!」のメインキャラは、トシしか残ってない状態のお話である。新選組の残党は、サブキャラである、島田魁や旗持ちの人だけだ。人気のあったメインキャラで、前作品の最終回以後も生きていた、オダギリジョー演ずる斉藤一や、棒読み殿様、松平かたもり公らは、回想シーンで登場するのみだ。しっ、しかし!こぉんの、二人とも、あ、あ、あ、相変わらずだのぉー!オダギリの台詞回しは、平坦すぎの抑揚なさすぎだし、かたもり公は、懐かしさのあまり、涙出てくるほろの棒読み健在で、もう。もう!いいよ。とぉっても、いいよぉーん、オダギリと、まつだいらがだもり公さぁー。

さて、函館ストーリーのかなめは、新キャラである榎本武揚、大鳥圭介と、トシがどう絡むか、新キャラの出来ばえ如何にかかっている。それが、たいへん、良かった。榎本の鷹揚さ。この男は、キザなフリをした熱血漢だった。それを、鷹揚と、俺は表現しよう。

また、1回こっきりのスペシャルゆえに、函館戦に明るくない、俺のような視聴者のために(明るくないのかぃいっ)、ジオラマの軍議用の将棋の駒置いて作戦考える模型のやつを、場面ごとに使い、トシたちが置かれた地理、状況を説明してくれたのも、上手い演出だ。

降伏はせん、断じてせんと主張し、榎本への反感をあらわにする土方。

歳「俺は西洋がきらいなんじゃない。西洋かぶれがきらいなだけだ。」

ひたいに青筋立て、怒り心頭な土方に、榎本は、鷹揚な声音で、言う。

榎「あんた、死にたいんだろう?一日も早く、いくさでさ。」

榎本は、死ぬための戦いに、オレの兵隊を預けられるか!と怒鳴り、土方は、榎本の心根を理解してゆくのである。榎本は、兵を無駄死にさせたくない、自分は総裁として責任をとると話す。北海道を開墾して、牛を飼って、チーズを作りたいのだと、夢を語る榎本に、土方の、硬く結んでいたほほが、ほころんでゆく。こいつ、ただ降参したいだけじゃなかったんだな、と。

榎「こう見えても、あたしだって、さむらいだよ。」笑顔

90分間のドラマ中で、この、土方VS榎本の会話シーンは長かった。さっきまで「今日、死ぬ気」だった男が、「ずっと生きていく気」になるまでを表現するためには、それだけの長さが必要だったし、論を闘わせる、演技者同士の、火花と、融和との、緩急のつけ方が、実に見事だった。彼らのやり取りを見ていて、俺は、議論においては、恫喝も、仲直りも、「闘い」なのだと感じた。仲直りしたと見せかける戦法、という意味ではないよ。意志を通じ合わせ、融和してゆくこと、人を愛し生きることが、「闘い」なのだと思ったのだ。

脚本も見事だが、演技者も見事だ。刃物のような土方と、鷹揚な榎本。二人とも、武士道という名の、「ロマン」を求めている男であったことが、お互い分かったとき、二人の武士は、盟友になれたのだった。

歳「俺たちは大事なことを忘れていたようだ。あきらめないってことだ。」

つい、一昨年までは、武士道は「日常」であって、「ロマン」の対象ではなかったのだが…明治2年、土方歳三、この時、35歳。

小者と思っていた大鳥も、屈するを悔しがる、底意地の男だと知り、三人の、洋装のさむらいは、手を取り合い、決戦の決意を確かめ合った。降伏はせん。敵に、討って出るんだ!いくさは、勢いだ!トシが言う。

歳「いいか、これは、死ぬための戦いではない。これから俺たちは、生きるために戦うんだ。」

敵将の首を取らんと、小隊を率いて出陣する土方。ところが、敵の急襲が!断崖絶壁である函館山を、敵軍が越えて来たのだ。島田たち、新選組のいる陣が攻撃を受け、土方・榎本・大鳥が企てた作戦は、頓挫するかに見えた。ジオラマの前で唸る榎本。

榎「信じられん。まるで、ひよどり越えだ。」

しかし、意欲を取り戻した土方は、戦意を、即ち、生きる意志を、投げ出すことなど、ない。大丈夫だ、昔の仲間を助けに行き、敵将の首も取ってくるぜと、榎本に、笑いかけるトシ。

あっ。トシが、笑ったよ。

嬉しいな。だって、トシが、笑ってるんだもの。ねえ、トシ。あなたが笑ったらね、榎本武揚も、笑ったんだよ。あなたが、戦地に駆けつけたらね、窮地に陥っていた兵士たちも、笑ったんだよ。おお、我らが、土方歳三さんだ!って、みんな、喜んだんだよ。

歳「土方歳三について来い!」

オォーッ!歓声があがったよ、トシ。

みんな、あなたを、好きだから。あなたが、いてくれて、あなたが、元気で。あなたが、その名を、名乗ってくれたから、みんな、嬉しい気持ちになれたんだ。


銃声が聞こえた?


みんな、あなたを、好きだから。


倒れた。地面に倒れた?


あなたが、いてくれて、あなたが、元気で。


銃声だ。倒れた…たおれ、た?


あなたが…


歳「逃げろ!」


戦っている!!彼が、立ち上がっている、剣を振るい、立ち回っている、敵と戦っている!誰だ、あれは?あれは、お、鬼の形相だ!ひたいに、あさぎ色の鉢巻をしめているぞ?!敵軍の隊長が、震える声で問うた。

「な、何者だッ?」



なにものだって?フッ、誰に言ってやがんでぇ。俺が誰かってか。俺はな。聞いて驚け!



「新選組副長、土方歳三。」



…あなたが、その名を、名乗ってくれたから、みんな、嬉しい気持ちになれたんだ。


( 完 )

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