NHK大河ドラマ「功名が辻」感想文(5) ガラマニ作
06/10/15 第41話から、06/12/10 第49最終話まで

06/10/15 第41話 あとは伊右衛門。そち一人で走れ。

大好きな孫平次が、逝ってしまいました。俺は、はらはらと泣きました。今年度の大河に、このように良い俳優、田村淳さんを起用して下さって、本当にありがとう御座います。田村淳さん、お疲れ様でした。渾身の演技でした。あなたが、俺と同じように、NHK大河ドラマを好きで好きで仕方がないことが、この役に全身全霊をかけたことが、滝のしぶきがごとく、ごうごうとそして爽やかに感じられた回でした。有終の美を飾られましたな。

山内一豊、堀尾吉晴、中村一氏の同僚トリオを、2006年のお正月から見続けてきて、いちばんオットコマエで、ニヒルなくせに熱血漢で、誰よりも賢くて…そんなあなたがいなくなると、俺、ああ年末が近いんだな、今年ももう終わりなんだなって、そんなふうに感じます。

病に伏した孫平次こと中村一氏さんの家に、お見舞いに来た、一豊と千代、堀尾夫妻。かつての仲良しグループが、久しぶりに、せいぞろい。孫平次の妻(乙葉さん)が、「医師が言うには、夫は来年の桜は見れないと。数々の戦場を生き抜いてきましたのに、病には勝てませぬ!」と嘆きます。台所で。そう、奥さん連中だけで話す場所が「キッチン」なのにも、女性脚本家ならではのリアリティがあってヨイ。ドラマにはリアリティがなくては、歓びも悲しみも表現できません。

さて孫平次は、ずっと咳き込んでいます。結核でしょうか?結核で苦しむ演技といえば、2004年度「新選組!」の沖田総司(藤原竜也さん)の名演技を思い出します。俺は以前、「新選組!」の沖田総司にかんする項 で、藤原竜也氏の「咳き込み方」がまさに天才だと書きましたが、 本業が俳優ではない田村さん、よく勉強されたと見えて、咳で苦しむ演技が真に迫っておりました。孫平次は、一豊と堀尾さんに、「家康には付くな。豊臣を守れ。」と言います。すると堀尾さんがこう言いました。

堀「お前が一番、利にさといと思うておったが、お前が一番、潔いのかもしれん。」

と。友人の口からこう評される彼は…ああ、孫平次は、みんなに愛されてきたのだね。堀尾さんの言葉で、目がうるみました。

そして最後のシーン。掛川のきれいなお寺に家康を招き、接待する一豊。そこへやって来た、病状の進んだ孫平次。

孫「すまん。」

そう言って旧友・一豊の手を握ります。握りかえす一豊…ああ、思い出します。仲間内で出世が早かった一豊をねたみ、嫌味を言ったり、あからさまに、そねみの態度をとったこともあったよね、孫平次。ねたみそねみ。そうした負の心にあなたは負けず、自分を発奮させ、後には一豊を追い抜いたよね。若い頃にライバル意識剥き出しだったあなたが、一豊より先に精神的に大人になり、世情を冷静に見ることの出来る知将になったんだ。

家康に、合戦には弟を出しますと告げる中村一氏。中村家を守るため、家康に直に会いに行くという判断を、死に際に下した中村さんは、まっこと知将だ!大物武将家康(=大物俳優西田敏行)を相手に、威厳を持ち対するあなたには、最後の最後に、感動させられました!

長い廊下。一豊と、孫平次との、お別れのシーン。ああ、分かってるんだよね、二人とも。今日が、友との、永の別れの日なのだと。彼の薄いくちびるが震え、最後の台詞を…!

孫「あとは伊右衛門。そち一人で走れ。 …功名を、立てよ。」

06/10/22 第42話 ヒロイン千代、立つ。

俺は、「功名が辻」第1話から毎回、感想文を書いてきて、ヒロイン千代について論じたことは、何回かあったけれども、手放しに誉めちぎったことはない。仲間由紀恵さんは、よく頑張っておられるけども、大河の主人公としては、精彩に欠くのだ。でも最初の頃は、仲間さんは、生き生きしていて良いと思った。彼女のコミカルな演技で、時折笑い転げた。ところが、千代が若い頃には、仲間さんの「地」で通った演技が、愛娘を失った頃から、物足りなく感じるようになっていた。関ヶ原前夜である劇中にあって、千代は40歳を越えた年頃。そして山内一豊の妻が、戦国の賢妻と呼ばれる、有名なエピソードを描いたのが、今回なのである。

…で…すごく、よかった!俺ァ、仲間さん見直した。千代愈々立つ、千代益々隆盛だ!

徳川ナイフにつくか石田ジブにつくか、判断に迷う夫ツシマノカミへと、密書を送るため、使いを出す千代。使者の傘のひも内に、内緒レターを仕込むというのが有名エピソード(らしい)のだが、密使素人が関所を抜けられるよう、六平太にボデーガードを頼むのがイヤハヤなんとも。六平太は、山内家の間者でもなんでもないのに、命がけで密使を守ってくれちゃう=千代のために尽くしてくれちゃう。

前から思ってたんだけどさ、六平太の存在って、女の夢なんだよね。幼馴染みで、わたくしのことを何でもわかってくれて、困った時には身をていして助けてくれて、なおかつオットコマエで。んで、正式な旦那は一豊!六平太とはおともだちなの!当然のようにキープなの!超・女に都合のいいキャラ六平太!そんな彼のけなげさには、見てて気の毒になっちゃいますフフフ。最終回までに、六平太がどうなっていくのかにも、注目ですなあ。

今回の一番の見どころは、なんと言っても、ヒロイン千代が、石田ジブの人質になることを拒絶し、迎えに来た不破万作さんにタンカを切るシーンだ。「わたしは、ダンナさま以外の男のゆうことは聞かへん!あんた、どんだけえらいじん(*1)か知らんけど、わたしに命令出来る男は、この世でただ一人、ダンナさま、カズトヨさまだけなんじゃ!けぇってけたぁーけ!(*2)

*1:えらいじん=身分の高い人
*2:けぇってけたぁーけ=この無礼者、帰りなさい

私は夫にしか従いません、か。妻にこう言ってもらえる男は、男冥利につきますなあ。そして、千代の振る舞いは、この時代の、武家の女が、いかに忠義心厚く、たくましかったかを描いており、俺ァ、胸がスカッとしましたよ。大河で戦国時代を描かせると、ともするとね、他の女脚本家ならば「封建時代の女は、抑圧されていて弱かった」とか、被害者意識一辺倒で、オイオイ泣かせたりしてきたけど、千代は、大石静氏は、違うね。夫を立てることは自分を立てることであり、また千代のような利発な女性が尊ばれたこの時代は、現代的な視点で「性別でサベツされた時代」と断ずるのは不適当だと、改めて思いましたね。歴史認識とは、後世の作家による創作だとは、常々思っておりましたが、この台本はつくづく、いい出来です。なにより仲間由紀恵さんが、円熟され、良くなってきました!脇役にばかり目がいく俺が、今回はヒロイン千代に釘付けさ。「功名が辻」、最終回の近いこの時期になって、がつんと面白くなってきましたねっとぃ。

06/10/31 第43話 六平太、一豊様を守って。

千代「六平太、一豊様を守って。」

ですってよ奥さん。そんな殺生な(死語)。あ、ハイ、こんばんは。みんな大好き「功名が辻」も、気がつけば師走が目の前。次回、第44話はとうとう、天下分け目の関ヶ原です。

俺は、このドラマ見るまで、ヤマウチカズトヨなる戦国武将を、つぇんつぇん知りませんでした。大河タイーガばっか書いてるガラマニさんて、歴史マニア?と思われている読者さんもおられるんじゃないかすら。でもねー、俺、日本史はつぇんつぇん詳しくないんです。

そんな俺は、今回の放送、第43話が、山内一豊の妻・千代ではなくって、ヤマウチカズトヨ本人の大一番、みどころ大目玉であることを、放送前にネット上で知りました。「小山評定」です。「です。」って俺は知らんかったのですが。

んで、小山評定の史実がどうなってんのかは知らないで見たんですが、ドラマでは、一豊は、堀尾さんのムスコの台詞をパクってしまい、後で「パクってごめんな。」って、謝ってました。

関ヶ原前夜に隠居し、家督をムスコに譲った堀尾さんは、ムスコに、小山評定の場で「家康様の軍がうちとこを通られる際には、うちの城も兵糧も、領地もぜんぶ差し上げますから、使ったって下さい。」と言いなさいと命じます。小山評定の前夜、ムスコはその案をパパの友達・山内一豊さんに相談。山内さんは「それはいい案じゃ。徳川家康様につくか石田三成殿につくか、迷っている御仁の多い中、そこまで言われたら、家康様はさぞかし、サンクス!グッジョブ!と感動されるであろうな。」と言います。

評定当日、山内さんは堀尾ムスコをひじでこづいて、「パパの案を言え。」と促しますが、ムスコはビビってしまって、発言出来ません。すると山内さんは、すっくと起立し、「家康様の軍がうちとこを通られる際には、うちの城も兵糧も、領地もぜんぶ差し上げますから、使ったって下さい。」堀尾案を、そのまんま言ったのでした。すると家康さんは、「山内さんサンクス!山内さんグッジョブ!」と感動して…えーと…

ま、小山評定への感想は、おいとくとして(おいとくのかぃいっ)、俺が一番ウケたのは、タイトルコールにした、千代の台詞です。千代の幼馴染みで、職業が間者(無所属・現)である六平太に、前回の放送では、史実使者のお守りを頼んでいた彼女、今度はあーた、関ヶ原の戦いに臨んでですよ。言うことがですよ。わたくしの愛しのダンナは、いままでたくさんの戦場を生き抜いてきたけれど、今回ばかりは危険が危ない気がするからって、

千代「六平太、一豊様を守って。」

って奥さん。あーたムシよすぎ。六平太はさ、自分に惚れてる以外に、自分のために命がけで働いてくれる動機ないのに、言うにことかいて、当の恋敵を守ってて、あーた。なんて女に都合のいい脚本なんだろうかしら!

そして最高におもしろかったのは、そう言われた六平太が、ものすごくイヤそうな顔をしていたことです。あー、楽しい。

06/11/5 第44話 決戦!関ヶ原

しかし相変わらず六平太かっこよすぎ。相変わらず六平太だけは、山川出版社の「詳説日本史」が頭に入ってる行動とるんだよな。肝心かなめで出るのはいつも六平太。関ヶ原陣中の山内一豊に、山川出版社で習ったことを教えに来てくれるのも六平太。西軍と東軍の運命を左右する小早川秀秋を説得するのも六平太。おまへはなにものなのかと。どこの家の間者なのかと。小早川さんに「六平太!」って名前呼んでもらってる様を見て、「いつの間に、六平太は毛利サイドに雇われてる設定が復活したんだ」と、唖然とするさ。いま関ヶ原にいるのは、惚れた女・千代に「一豊さまを守って。」とオネガイされたからじゃなかったのか六平太。そんなオネガイをする方もする方だが。しかし六平太、惚れた女のために、命がけで恋敵を守っちゃうなんて、これは女である我が身には分からない心境だ。とある男性に、六平太の心理をどう見るかと問うたところ、「彼こそはシラノ。彼こそはラマンチャの男。あれが男のロマンよ。」と言われ、ハタとそうかと手の平をうった次第。

あ、ハイ、こんばんは。今日の放送、関ヶ原の合戦は、なかなかに興奮しました。期待ハズレではありませんでした。45分内にコンパクトにまとめてあり、合戦シーンは迫力があったし、ロケも多かったし、CGも違和感(あまり)なかったし。「徳川葵三代」のときのフィルムを再利用しているという意見もウェブ上で読みましたが、「功名が辻」の関ヶ原として、上手く編集されてるからエエがなと思います。まあ、不満もありますけど。ドラマの最中に局アナ+スタジオセットを出すなとか。オットコマエな戦国武将たちの演技を見たいのに、局アナのパーマネントと妙に濃い腕毛は見たくないとか…欲を言えば、俺の好きな武将・大谷吉継をもっと出してほしかったとか、雑兵時代の宮本武蔵を出してほしかったとか、黒田長政はさりげにお父さんに似ていたよ馬ズラでとか、井伊直政さんの真っ赤な甲冑姿がシャアザクみたいとか、色々思いました。

しかしなによりも、俺が嬉しかったことはね。六平太の活躍も嬉しかった。史実と照合しながら、関ヶ原の戦いを考察出来たのも嬉しかった。でも、それよりもずっと、嬉しかったことは…

主人公・山内一豊が、すっごく、かっこよかったことです!俺ァ、一豊の騎馬戦が見たかったんだ!若い頃に、数多くあった彼の戦功が、合戦シーンとしてろくに描かれてこなかったのが、ひどく不満だった俺。一豊自身の口から、「これが最後の戦場になるだろう」という言葉が出た今回、関ヶ原の戦いは、それこそ史実で言えば彼の晩年です。そんな五十路の彼の、晴れ姿を見たかったんだ俺ァ。馬にまたがり雄叫びする彼、刀をふるう彼、敵をなぎ倒す彼のかっこいいこと!戦略を考える彼、義に厚い彼が、存在感あり、頼もしく描かれた関ヶ原の戦いは、よかった。胸がすかっとしましたぜ。ヒーローは一豊なんだからさ、かっこよくなくちゃね。

06/11/13 第45話 土佐二十万石はめでたいかどうかわからんぞ!

みんな大好き大河ドラマ「功名が辻」も、気がつけば、残すところあと4回。師走の足音の聞こえる季節になりました。最終回までカウントダウンの時候になって、ついに来ました、一豊、土佐の国ゲット!こうなる日を、五藤吉平衛と同じぐらい、楽しみに待ってましたよ、俺は。

関ヶ原の戦いが終わり、石田三成さんは斬首さるる瞬間まで、義のため健康に気を使うの有名エピソードが流れました。六条河原の処刑場で、白湯を下さいと言う石田さん。干し柿ならあるが食うかと言う処刑係りの人。すると石田さん、柿は痰の毒だからひかえますと言うんですね。歴代大河で様々な解釈で描かれてきたこのシーンを見て俺は、ふとこんなことを思いました。

そういえば、三島由紀夫は、自衛隊の基地に討ち入る日の朝食に、こんにゃくを食べてたんだったよな。自殺評論家の鶴見済さんは、自決後に解剖されることを考えに入れたら、こんにゃくでは切腹する者として印象が良くないという理由で、

今ひとつ詰めが甘いのだ。

(鶴見済著『無気力製造工場』1994年太田出版より)

と評していたけれども、そんなことないんじゃないかしら。三島由紀夫さんも、石田三成と同じように、武士たるもの、いついかなる時にも戦うため、自分の身体は健勝に保つべしという思想でいたのではないかな。どうせ死ぬんだから…なんていう考え方は、石田さんの態度を見ると、恥ずかしいことだな。三島さんもさ、胃腸をきれいにするこんにゃくを食べて、死地に赴きたかったのではないかな。

去り逝く石田さんについてはそんなふうに思いつつ、俺が待ち望んだ一豊の大出世エピソードは、期待以上のおもしろさでした。我らが山内一豊、関ヶ原の戦功により、と言うよりは、前段階の小山評定での発言がグッジョブだったで賞で、「土佐一国、二十万二千六百石を与える!」ですってよ奥さん。カズトヨのビックリした顔といったら!

でもさあ、こんな素晴らしい知らせは、一豊本人の口から、千代に告げてほしかったですよ。主君より先に家に駆け戻った五藤の弟と祖父江のムスコが、千代にネタばれ喋っちゃうんだもの。あのシーンはさ、五藤弟と祖父江ムスコが、アウアウ泡食って、喋りそうになったところへ一豊到着で、「ちちち千代!ととと土佐、とさ、にじゅう〜まんごくじゃ!」って言ってほしかった。俺が千代ならそう思う。

嬉しい宴会を開く、山内ファミリーのお座敷。五藤吉平衛のお陰膳が、ちゃーんとあるのが泣かせるぜ。でかい酒盃で一気飲み大会をする、楽しい楽しい千代と一豊。酔っ払って千代、夜中の縁側にフラフラ出て、月を見上げ…

これだけの描写で「次に六平太が出る!」と分かってしまう俺たちは、今年一年、この番組とともに歩んできたんだ俺たちだよねぃ。宍戸錠、案の定、ここぞという場面で出てくる六平太グッジョブ!いきなりゆうことが

六「土佐二十万石はめでたいかどうかわからんぞ!」

ですものよ。このセリフで、ガラマニ家一同爆笑ですよ。

六「一豊があまり浮かれすぎぬよう、手綱を締めておけ!」←親切

ウチの母いわく「あの人は、誰から給料をもらっとるんやろうねえ。」でまた爆笑。架空の人物であり、常に頭に山川出版社「詳説日本史」が入っている行動をとる彼とは、作者・司馬遼太郎自身であり、我々視聴者の代弁者であり、そしてすごく分かりやすい番組ナビゲーターになりましたですねえ。本日の放送最後に登場して、千代に言ってくれることはそのまんま、「次回予告」じゃぁ、あーりませんか。では、サザエさんの次回予告風に、お2人にしめてもらいましょう。

千代「さあて、来週の功名が辻はっ?」

六「六平太です。日に日に寒くなってきたということは、最終回が間近だってことだ。土佐は南国、土佐丸高校、犬飼三兄弟(*1)のいる所でな。愛知県岩倉市出身で、海も知らねえ一豊がいきなり行って、難なく治められるようなヤワな土地じゃねえんだ。在来の長宗我部氏がどう出るか。バカの一豊がどれぐらい冷徹になれるか。ま、無理だな。千代のそばには、俺がついてねえと、あのナマクラ亭主じゃ、心配で仕方がねえ。

さて次回は、「千代の皿鉢料理(*2)はだれのもの」「六平太愛の渦潮」「一豊一本釣りされろ」の3本です。」

千代「来週もまた、見て下さいねー!じゃーんけーん、ぽん!うふふ。」

*1:犬飼三兄弟:水島新司著『ドカベン』『大甲子園』に登場する、主人公ドカベンの強敵。高知県代表、土佐丸高校の犬飼小次郎(長兄)と犬飼武蔵(次兄)。兄のいる土佐丸高校を破って県代表となる、室戸学習塾の犬飼知三郎(三男)のこと。ガラマニの高知県のイメージは、95%犬飼三兄弟で出来ている。

*2:皿鉢料理:さはちりょうり。土佐の郷土料理。

06/11/20 第46話 まー山内くんはよう頑張っとるから、ハイ土佐二十万石!

♪土佐の〜高知の〜桂浜〜
 かつおのたたきを〜めしあがれ〜
 闘犬で きたえた この体〜
 宝は〜国の〜竜馬じゃき〜♪ 「なめたらいかんぜよー!」

犬養竜馬の歌(いぬかいりょうまのうた)往年の名番組「ごっつええ感じ!」より

あ、ハイ、こんばんは。高知県のイメージの、95%は「ドカベン」の犬飼三兄弟で、残りの5%はこの歌で出来ているやつ、ガラマニです。俺の土佐への認識は、今回の「功名が辻」で言うと、山内家の下女さんたちと同じぐらいであります。俺は、斉藤道三公の国の人間ですから、山内一豊とは郷里が近いのです。山内家の皆さんも、俺も、海を知らない人種であること、土佐の国へ行ったことがないことが共通しており、下女さんたちが訴えていた、未知の土地への不安感、ウンウンわかるわかる状態でした。

♪土佐の〜高知の〜桂浜〜においては、めっさ異邦人である千代を、今まで無償で助けてきた六平太。今回、おもむろに山内夫婦の前に現れ、正式に家臣になりたいと言い出しました。以前、バリバリ第一線の忍者だった頃には、小りんたんと夫婦のフリをして、山内家の嘱託やってた時期もありましたが、今回は改めて「死ぬまで千代のそばにいる!」と宣言したじゃ、あーりませんか。

史実の山内一豊が、次回放送で(以下ネタばれ自主規制)…な役回りを、架空の人物・六平太にやらせることにしたんだなあ。俺は、その役は弟ヤストヨかと思ってましたので、嬉しい裏切りでしたねえ。

ふと思うのだけど…われわれ視聴者と千代は、六平太が、どうしてそこまで尽くしてくれるのか、理由は重々わかっておりますけども、今回、彼を採用した一豊のタコは、そのへんどう思ってるんでしょうねえ?昔はこの2人、決闘したこともあったじゃない。…ああ、いや。一豊のタコスケは、そこまで深く考えないのかな。千代がエエゆうとるんやから、エエのやろかー、ぐらいで納得するんかな。

さて例によって、登場する前から「あ、次、六平太が出る。」と視聴者にも千代にもわかる演出。まず軒の雪がドサッと落ちて、オヤ?と思わせるなんて、粋ですねえ。あたまに白いものが混じる香川照之さんの、美しき「老い」が、ヒャーッ、オットコマエです。茶色のキモーノもすてきな着こなし。香川さんって、なんでも出来るんだぁーと、ますます惚れてしまいました。俺がたびたび言う「オットコマエ」とは、容貌の美のみを指すのではなく、男の才能をいつも指しています。ボーッとつったってるだけの美男子はけして「オットコマエ」ではありません。

で、そんな俺。香川さん、六平太さんに夢中な俺が、今回、ゲゲゲとオオウケしたシーンは、一豊が、彼を家臣にするぞと言った、その刹那でした。

一「望月六平太!」

…えーと…あ゛?もちづき?エエーッ、六平太って、苗字あったの?!望月さんだったのッ!!ビックラしました。後で検索して、原作とドラマにも、ちゃんと苗字設定あったことを確認しましたが、俺、どっかで読んだかもしれんけど、完全に忘れておりまして、アホの一豊がいきなり「もちづきろくへいた!」って言ったもんだから、仰天しちまいましたよ奥さん。

♪土佐の〜高知の〜桂浜〜
 いきなり〜銃撃〜ヤストヨにぃ〜
 一領〜具足は〜確かんにぃ〜強い〜
 やまうち〜やまのこ〜びびります〜♪「なめたらいかんぜよー!」「オォーッ!」

【余談1】ちなみに「ダウンタウンのごっつええ感じ!」本放送も、大河ドラマと同じ、日曜よる8時のワクでした。俺は当時、ごっつをビデオに録画し、大河をナマで見る生活をしておりました。そうして録画したごっつのテープ、重ねて録画し、前のを消しておりましたが、ある時期から…そうですね、「兄貴」シリーズが始まった頃に、「この番組は、歴史的な番組になる。」と確信し、最終回まで全ての放送を保存しました。2006年現在、あのようにおもしろい、純粋なコント番組が無いこと、ダウンタウンの松本人志氏が「今のテレビ局では、規制とかで、僕のやりたい企画は、なにひとつ実現できなくなったのです」と嘆いてらっしゃることを見るにつけ、淋しくなります。

【余談2】この記事に「香川さん」キーワード検索で来られるかたは、香川照之さんではなくて、ごっつの「香川さん」情報をお探しなのではないかな。「おはようさん、おはようさん。まー君はよう頑張っとるから、ハイ金閣寺!」の。

【余談3】ガラマニがよく使う「オットコマエ」という表現は、松本人志氏の著作本が元です。松本さんは、同性の目線で、真に男らしい、いい仕事のできる男を指して「オットコマエ」と表現されてました。

06/11/28 第47話 さらば六平太

六平太が死んでしまいました。俺は彼が大好きでした。今回の放送を見て、感想文を書くにあたり、どんなふうに書こうかと、あれこれ考えた挙げ句、素直ぉ〜に思いを綴るのが、いちばんエエがな。という結論に達しました。

今年度の大河「功名が辻」を語ろうとして、六平太ぬきには語れません。香川照之さんの演技力は番組一であります。47話はとびきりでした。独特の長い間、千代への深い思い。死にぎわの告白。

六「千代が、好きだ。」

この言葉をわれわれ視聴者は、聞きたくて聞きたくて、一年間待っていました。きっとこう言うだろう、言ってほしいと願ってきました。それを叶えてくれた彼は、大仰(おおぎょう)に声をはらず、泣き叫ばず…重々しくもなく、押し付けがましくもなく、たんに事実をだけ、告げました。千代が好きだと。歯を見せて笑いました。なんと爽やかな遺言でしょうか!

歴史劇における架空の人物が、これほどまでに視聴者のハートをゲッチュしてしまうのが、大河の魅力のひとつであります。47話は、山内一豊という、有名でない人物の、史実上のクライマックスでした。相撲大会を開催し、地元有志の皆さんを虐殺する「山内一豊」。土佐平定は徳川家康の命であれ、祖父江のムスコがじかに手を下したのであれ、じっさい大量虐殺を行ったのは、我らがヒーロー山内一豊にほかなりません。

しかし、ドラマというものは、史実をのみ描いたのでは、くそおもしろくもなんともないものです。テレビドラマ「功名が辻」で一豊は、純朴でバカ正直が、長所な男として、ずっと描かれてきました。では一豊の、史実にある悪辣な面=相撲大会虐殺を、どう描くのかに、俺は注目し、予想をたてていました。弟ヤストヨを悪人に仕立て上げるか、祖父江のムスコのみをその役にすることも出来たはず。しかし、手を血に染めるこの役=大役に、よりによって架空の人物をもってくるとは、驚きました。香川さん演ずる六平太でなければ、つまり歴史上の有名人よりも「存在感」を持った人物でなければ、番組最大のクライマックスの「主役」をはたすことは出来なかったでしょう。

六平太というキャラクターをここまでに育てたのは、脚本の力もありますが、大部分、香川照之さんの力量に拠りますね。しかし、すごい。六平太神演技と、何度でも書きましょう。なんてオットコマエなんでしょう!47話の晩、世界でいちばんいい男は、間違いなく六平太で、間違いなく香川照之さんでした。千代、なんでこの人と結婚しなかったんだよとまで思う。男として、こっ…こん…こんないい男は見たことがないわ!

役者としては、まったく、隙が無い。完璧とはこのこと。芸術の分野で、完璧なるものとは、ほかに無い個性を築き上げることです。芸術的才能とは、人間のあらゆる才能の中でもっとも尊いものであり、演劇という芸術で、これほどの才能を開花させている、香川照之さんとは、いったいどれほどの器なんじゃと、恐ろしくさえ思います。

しかし。だがしかし。あん〜あ、しかし。

六平太はね、千代の、年上の幼馴染みの、近所のおにいさんなの。おっきくなって再会したら、オットコマエになってたの。敵方毛利の忍者なのに、タダで情報知らせてくれるの。毛利との契約期間が満了したら、頼みもしないのに、命がけで千代に尽くしてくれるの。最後には、史実の罪を一身に背負って、好きだぁーと告白して自殺してしまってあたしは泣くのよ彼の名を呼んで。…そんな六平太って…ほんでもって、千代にはレッキとしたダンナ、言うこときく子で黙って稼ぐカズトヨがいるの。棒読み竹中半兵衛も、千代が好きって言って死んだし、かっこいい男キャラは、みーんな、千代が好きなのよぅ。

あのさ、これ、女の夢やがな。なっ…なん…なんて少女マンガのような!なんて女に都合のいい設定なんだろうかしら!俺が「ゴルゴ13」や「島耕作」を読んでて思うのと同じ感想(=これ、男の夢やがな。プチむかつく。)を、「功名が辻」見てる男性は思うのかしらねえ。

06/12/5 第48話 思えば遠くへきたもんだ

最終回前の静けさ…たいして大事件もない回。平穏無事なのは、良き事なのですが、ドラマとしては、みどころが少なくて、ちょっち物足りませんでした。史実に事件がない、こういう回こそ、おもしろいお話しを創作して見せてほしいのですけどねえ。その点、2004年度「新選組!」は、毎回ぬかりがなかったよなあと、つい比較対照してしまった俺です。

相変わらずの、一豊の天然純朴ぶりは、おおいに笑えました。家出した千代に、帰ってきてほしくて仮病スルとこは、一豊の大根演技がおもしろかったですねえ。白いお寝巻き姿の一豊が、ふとんからスチャッと起き上がり、青いおしぼりをポイッと捨てる仕草で、俺んち一同爆笑。

山内家の後継ぎの、縁組を家康に頼んだシーンでは、

家「お嫁さん探しをわしに頼むというのは、ツシマノカミどのの発案ではないでしょう。賢い奥さんの知恵でしょう。」

一「はい、そうです。うちのかみさんは賢いのです。」

って言っちゃうとこで、また俺んち爆笑のウズ。

ああ、千代と一豊も、老夫婦となったのだよねえ。思えば遠くへきたもんだと、新婚の頃を回顧するふたり。ああ、視聴者である俺の一年も、もう終わりなんだなあと、しみじみ感じ入ります。次回、最終回なのかあ…長いような、短いような、「功名が辻」の一年だったなあ。

毎年思います、今頃になると。俺はバブリークリスチャンではないので、クリスマスには特に思い入れはなく、冬コミに参拝する人種でもなく。俺の、師走の恒例行事といえば、大河の終了なんです。大河ドラマが…最終回を迎えると…おや雪が。そうかもう、一年間が終わるんだと、深く嘆じて、ゆくとしを思うのです。さようなら、千代、一豊。今年一年を、ありがとう、山内一豊と、賢い奥さん。

06/12/10 第49話 さよならわたしの旦那さま

どんなに仲のよい者同士にも、別れの時は来ます。それが夫婦のさだめ、人のさだめ、命のさだめ。誰しも逃れられないさだめ、それは、死に別れ。我らが山内一豊が、とうとう、帰らぬ人となってしまいました。宿命とはいえ、悲しい、ひどく悲しい…そして、夫よりはずっと長生きした千代も、いつかある日に、霞が晴れていくように涅槃へと、一豊のところへと行ってしまいましたね。

我々視聴者にとっては、今年一年の、苦楽をともにしてきた番組「功名が辻」との、お別れの日でした。最終回とは、どんな番組においても、なにがしか淋しいものですが、大河が面白かった一年間の最後は、淋しさ一塩です。今年度も、昨年度 「義経」 と同様に、俺はNHK大河ドラマを見続け、感想文を綴ってきました。大河ドラマを俺は、大好きで、歴史学も大好きで、人間ドラマがなにより好きで…「功名が辻」のおかげで、今年も良い年になったと、師走の雪空を見上げて思っています。

土佐の守となった一豊は、ある日、脳の疾患で倒れ、一時回復するものの、左手が痛み、思うように動かせなくなる症状が残ります。祖父江のムスコで、子供の頃、やんちゃくちゃボウズのヤンチャリカだった男の子が、立派な医師になり、大恩ある一豊を治療するくだりは感心しました。前半部で描いたキャラ(伏線)が、後半部できちんと生かされるのを見ると、人ひとりが「生かされた」と感じますからね。

しかし、一豊の病状は進み、「そろそろだ」と、千代も家臣たちも悟ります。そしてある晩、夜陰にひとつ灯された、ろうそくの炎がふっと消えるように、彼は、眠りにつきました。

最終回にあたって、もうあまり苦言は呈さない方がよかろうとも思ったのですが、やはり死生観にかんしては、俺の思想として譲れないので、批評します。仲間由紀恵さんは、いとおしい人の死を嘆く演技が、ここに至っても、充分に出来なかったと思いました。千代という人間が、一生涯を賭けた最愛の夫が、死んでしまう。その喪失感さえ、俺の心には響いてきませんでした。女にとって夫とは、「自分より先に死ぬ者」と先刻承知されているものではありますが、でもね、一豊は、千代自身の片翼ではないですか。魂の半分ではないですか。俺が演出家だったら、仲間さんが今までやってきたのと同じ「旦那さまーッ!(すがって号泣)」にはせず、

・敢えて冷静に、夫の死を受け止める。静かに泣く。
・夫が死んだことが、事実として受け止められない。静かに放心する。

の、 どちらかにしますね。千代さあ、誰が死んでも同じだったですよ。実子の時も、六平太の時も。名前呼んで、すがって号泣。それを、一豊にも、まったくおんなじようにされたのでは、興ざめです。もっと、もっとね。淋しいよ悲しいよと、見ている俺たちにも、行かないで一豊、終わらないで「功名が辻」よと、嘆かせてほしかったですね。

ですが、総合的に見て、2006年度の大河ドラマ「功名が辻」は、秀逸な作品になったと思います。おかげで、楽しい一年になりました。ありがとう、さらばだ!我らが山内一豊とその妻、千代!

06/12/13

「功名が辻」感想文への感想文はこちらへ

NHK大河ドラマコォナァ目次へ戻る

ガラリアさん好き好き病トップへ戻る