「聖戦士ダンバイン」番組・スタッフ解説 ガラマニ作

連続テレビアニメ「聖戦士ダンバイン」 全49話

放送年月日 1983年2月5日 第1話〜1984年1月21日 第49話
全話タイトル別項

毎週土曜日、夕方 5時30分より放送。1話は30分間。キー局は名古屋テレビで、筆者が見ていたチャンネルは11番。同じ枠の前番組は「戦闘メカザブングル」、後番組は「重戦機エルガイム」。

企画 日本サンライズ現・サンライズ

制作 名古屋テレビ、創通エージェンシー、日本サンライズ

以下文中、敬称略したり、しなかったりします。

原作と総監督 富野由悠季

とみのよしゆき。原作と総監督を務めた作品に「無敵超人ザンボット3」「無敵鋼人ダイターン3」「機動戦士ガンダム」「伝説巨神イデオン」「戦闘メカ ザブングル」などがある。(以上は「聖戦士ダンバイン」以前の作品。)
「聖戦士ダンバイン」は、富野氏が生み出した異世界設定、バイストン・ウェルの物語の、シリーズ第1作。バイストン・ウェルのシリーズは、1983年の「聖戦士ダンバイン」に始まり、小説、ビデオ用アニメ(=OVA)等の媒体で、2006年のブロードバンド配信アニメ「リーンの翼」まで、続いている。富野氏のライフワーク「的」作品である。

脚本 渡辺由自(わたなべゆうじ)、斧谷稔(よきたにみのる=富野由悠季)
脚本 富田祐弘

とみたすけひろ。第13話で死ぬ予定だった、トッド・ギネスの延命を、富野監督に願い出たのはこの方。トッドのファンは、富田氏のおうちに足を向けて眠れない。えーと、どっちの方角かな。

キャラクターデザインと作画監督チーフ 湖川友謙

こがわとものり。富野監督とのコンビ作品に、「無敵鋼人ダイターン3」「伝説巨神イデオン」「戦闘メカ ザブングル」「重戦機エルガイム」がある。また、松本零士作品への参加も多く、劇場版「さらば宇宙戦艦ヤマト〜愛の戦士たち〜」、テレビ版「銀河鉄道999」の作画には、原作絵と趣きを異にする「湖川調」が見られる。立ちポーズで、背筋がふんぞりかえり、腰よりぐーんと後方に肩の位置があり、片手が無意味に差し出されていて、やたらとアゴをつき出している人物画にピンときたなら、それが「湖川調」だ。テレビコマーシャル「ナガイの海苔」は、♪ナーガイーのぉノリノリ!ナガイの海苔ですナガイさぁ〜ん!な歌に合わせて踊りまくる永井社長のアニメby湖川友謙が、脳内エンドレス リフレイン リピートする傑作。確固とした美術解剖学に基づく人体デフォルメ、独特の意匠、少ない動画で見せ場を作り上げる技術など、およそアニメーターとして、世界最高峰の腕を持つ天才。

作画監督 坂本三郎

さかもとさぶろう。シーラ・ラパーナ登場回のほとんどを手がけた巨匠。1935年生説あり。若き日には、トキワ荘に出入りし、寺田ヒロオ氏主催の第一次新漫画党に在籍していた。藤子不二雄A作「まんが道」「愛…しりそめし頃に…」に登場する、黒目がちの寡黙な青年。ご本人。当時のエピソードとして、動物デッサンのスケッチブック「だけ」で、押し入れが満杯になっていたとのこと。もちろんこれは、練習絵の中の、ごくごく一部の量だ。天才とは、努力する才能を指す言葉だとは、坂本先生が教えてくれる。
1986年、「まんが道」が、NHK銀河テレビ小説でドラマ化されたとき、坂本三郎名は「坂木四郎」に変えられ、演じたのは田中隆三氏だった。
青年・坂本三郎は、20歳になんなんとする一時期、漫画家として、藤子不二雄A氏らと交流していたが、まもなくアニメーターに転身した。まんが道キャラとしては、鈴木伸一氏と同じような道程をたどったわけである。
1979年、石ノ森章太郎氏原作のテレビアニメ「サイボーグ009」の作画監督を手がけた際には、アニメ雑誌のふろくに、坂本三郎氏が描いた島村ジョーのポスターがついているという、まんが道的な意味で、ものすごい事態になっていた。筆者が、小中学生時に好んで見ていた数々のアニメの作画を、まんが道に出てくる坂本先生が手がけていたと、後になって知ったときの感激といったらない。
ダンバインもザブングルも、最終回は、坂本先生が作画監督である。人が持つ愛情と、非情さの表現に長けた、坂本先生であるからこその、名最終回だ。また、ダンバイン業界随一の人気キャラ、シーラ・ラパーナの魅力は、坂本三郎先生の力量によるところが大きかろう。
坂本先生の絵は、線がやわらかい。人は、人情くさく、土くさい。坂本先生は、女王も、下層民ガロウ・ランも、こずえに遊ぶ小鳥も、鞭うたれ働く軍馬も、「みな同じ生き物だ」という思いをこめて、描いておられるように感じる。上野動物園に足しげく通い、動物デッサンを続けた修行時代が、彼の絵に普遍性を持たせたのだと思う。生命に、優劣なしと!「まんが道」に出てくる、漫画家・坂本三郎作「小公女」の表紙、そこで微笑むセーラ・クルーと、嘆きのシーラ・ラパーナは、同じ先生が描かれたのだ!と思うだけで、涙ぐんでしまう。坂本先生が描かれる少女は、いつも可憐で、そして孤高なのだ。

作画監督 金山明博

かなやまあきひろ。故・長浜忠夫監督作「超電磁ロボ コンバトラーV」「超電磁マシーン ボルテスV」「闘将ダイモス」などのキャラクターデザインを手がけた巨匠。ダンバインにおいて、金山作画は、世間の評判は、かんばしくない。だが、金山先生のダンバイン作画が「下手である」のでは、ない。俺は、金山作画が産湯で、湖川作画が離乳食のような育ち方をした。どんな育ち方だ。ウン素晴らしい育ち方だ。両者ともに、ロボットアニメの潮流において、欠かせない重鎮である。ダンバインにおいては、金山先生が、湖川デザインに縛られすぎることなく、金山調バクハツな作画をやっていたなら、もっと面白い絵が見られたのではないか。金山調も、湖川調も、お互いにアクが強すぎ、折衷策をとったゆえの曖昧さが、絵に表れたと考える。が、これは「世間」の評判を、俺が分析しただけのこと。俺は、金山先生が描かれるトッドが、好きだ。

メカニカルデザイン 宮武一貴(みやたけかづたか)、出渕裕(いずぶちゆたか)

オーラ・バトラーやオーラ・シップなど、メカデザインには、宮武氏、出渕氏のお二人がクレジットされているが、作画監督チーフである湖川友謙氏が、相当量、メカデザインにも手を入れている。また、後述する池田繁美氏は、艦船の内装デザインを、出渕氏とともに、多く手がけている。「聖戦士ダンバイン」のメカが、劇中で、原案者ショット・ウェポン作のものの他に、ゼット・ライト作、共同チーム作、ショットの設計図を見た他国の工房作などなどに分化されていくのと同じように、メカデザイン班の人員も、多岐に渡るといってよいだろう。ショット=宮武氏という感じで。
この番組の中で、メカデザインの最高峰を挙げよと言われたら、俺は迷わず、ダーナ・オシーだと答える。
「聖戦士ダンバイン」は、ロボットアニメ界に、常に新風をふき込み続けていた富野作品の中でも、とびぬけて実験的なメカデザインをして、歴史に名をなした。曲線で形作られたオーラ・バトラーの意匠には、醜悪さがあるゆえ、実在的である。ありえない美にはリアリティがなく、オーラ・バトラーには、美しくないというリアリティがある。機械とは、人間以上に「理想化」されてはならないものである。かっこよさのみを求めて作られた機械は、使い勝手が悪いものだ。使いやすくない機械を、人は欲しがらない。だがオーラ・バトラーには、乗ってみたい、使ってみたい!と思わせる魅力がある。それは、完全性の、逆の位置にある魅力、すなわち不完全で、理想的ではないことにあるのだ。
このような異色のロボット、オーラ・バトラーを作り上げた宮武氏の「そうだ、昆虫をモデルにしよう。」というインスピレーションこそ、奇跡である。
俺は、ダーナ・オシーをはじめ初期のオーラ・バトラー、昆虫と怪獣と妖精さんのイメージが、いい具合にミックス混交された、ダンバインやビランビー、バラウが好きだ。ガラリアさん専用機バストールは、デザインでいえばあんまり好きくない。あんよがダチョウみたいだし、顔はベルク・カッツェみたいだし、女の子なのに、おまたにツノ生えてるし。
オーラ・バトラーの稀有な点とは、それ自体は無機質な「機械」でありながら、パイロットが乗り込んだ瞬間に、生気が吹き込まれ、機体が、「乗り手自身」に変化することである。機械の硬さと、生き物のやわらかさをあわせ持つ。背中の羽から、キラキラ光る粉をまき散らしながら、とぶ。工業製品であり、乗ったとたんに生き物になる、俺でも操縦出来るマシンだなんて。これ以上、魅力的なメカがあるだろうか。

美術監督 池田繁美

いけだしげみ。バイストン・ウェルの緻密な背景画を設定し、美麗な水彩で描いた巨匠。ラース・ワウやギブンの館などの建築デザインもさることながら、異世界バイストン・ウェルと、地上界の、厳密な描き分けがほどこされた風景画が、圧巻である。ゼラーナやブル・ベガー、ウィル・ウィプスなどの大型艦船の内部も、池田氏によるデザインが多い。とにかく細密で、ぬかりがない。この方は、インテリアデザインへのこだわりが、すごい。すごすぎる。池田氏は、特に、食器棚、本棚、たんすなどの、収納家具へのこだわりが、フツーではない。な、なじぇにそこまでゼラーナのくつろぎルームの「食器棚」の設定が細かいのだ。なぜそこで「食器棚」なのだ。ハゥッ、ゼラーナの「本棚」もすごいぞ!こまかッ!ここに目ぇつける俺のインテリアへのこだわりも、またすごい。いけだしげみたんインテリ〜ア萌え♪だけでコォナァ化したいほどだ。俺が、マイルームのデスクに鏡を置いて、勉強机兼化粧台にしているのは、なにを隠そう、キーン・キッスのマイルームby池田繁美の影響なのであるッ。ハゥッ、スプリガン内ショットのお部屋の「本棚」がこれまた(以下略

撮影監督 斉藤秋男

さいとうあきお。セルロイドに描かれた絵と、紙に水彩絵の具で描かれた絵。両者のコンビネーション、そして透過光(とうかこう)の細工なくして、オーラ・ロードは開かない。斉藤氏の、地道な職人技と、気迫あふるる創意工夫あってこそ、血わき肉おどるオーラ・バトラー戦がある。撮影班とは、セルアニメにとっての心臓部であるにも関わらず、名作アニメを語る際に、賞賛されるどころか、言及すらされないことが多いように思う。オーラ・バトラーたちが、ときにブンブン虫のように、ときに羽衣(はごろも)のように、ときに殺戮兵器として、変幻自在に動き回るのは、額に汗し、目頭に鈍痛し、指に血糊し、働き続けた撮影班あってこそだ。斉藤監督の手腕に敬礼する。

色指定(第1話〜10話)色彩設定(第11話〜38話) 戸辺尚代

となべなおよ。彼女こそ、ダンバインの、神がかった配色を担当した、脅威の目利き。この番組は、セル絵の具の、色バランスが、たいへんたいへん美しいのだ。メインキャラやメカの色指定は、それぞれのデザイナーも携わるが、作品全体を見て、使う絵の具を調整・決定するのが色指定の仕事である。而して、戸辺氏の気配りなくして、ダンバインの奇跡は起こらず。キーンのお部屋にあったお花は、真紅のバラと、やまぶき色の小花。リムルのお部屋には、白と黄色の大輪のお花が。ああ、キーンらしい、リムルらしいなあ。少女たちの個性が光るところに、戸辺氏のセンスが光る。

設定制作 川瀬敏文

かわせとしふみ。シーラさんに「カワッセ。」と棒読みで呼ばれている人のモデル。クレジットの「設定制作」は、バイストン・ウェルと地上界という舞台の、設定を詳細に作り上げる仕事。「カワッセ。」棒読みは、各話の演出も手がける。グラン・ガランにおいても、番組作りにおいても、グーな仕事をする、それが「カワッセ。」棒読みで。

音楽 坪能克裕

つぼのうかつひろ。管楽器を主調としたオーケストラだなんて、なんてすてきなのだろう。数々の名BGMを作曲した奇才。一度聞いたら忘れられない、独創的なメロディーの数々。殊に、オーラ・バトラー戦で流れる「坪能調」が、我々の心を揺さぶって、やまない。こんな名曲を、ふんだんに使ったダンバインが、名作でないはずがない。

録音監督 藤野貞義

ふじのさだよし。西城美希さんをはじめ、若く、すがすがしいキャスティングを担当。声優さんたちに演技指導をしたえらい人。富野監督から、役の年齢に近い演じ手を探すよう言われた藤野氏が、相応の人材を収集したとのこと。藤野氏自身が、若く、すがすがしかったから、「聖戦士ダンバイン」の奇跡のキャストを生み出すことが出来たのだと、俺は思う。若さとは、すがすがしさとは、実年齢や、しがらみのない地位を指すのでは、もちろん、ない。藤野氏が、ダンバインのときのように、今もこれからも、仕事に対して実直であられることを、心より願う。劇場版「機動戦士ゼータガンダム2 恋人たち」で、残念な思いをした大ファンより。ガラリアさんと西城美希さんと、そして俺とを、出会わせて下さった恩人、藤野貞義さんへ。

***

以上、ガラマニが好みでピックアップしたスタッフ解説でした。作画監督や演出家など、もっとおおぜいおられますが、ぜんぶは書きませんでした。項と時間が許せば、書きたいことはまだまだたくさんあるので、加筆するかもしれません。番組データを列挙するだけのつもりで、このページを作り始めたんですが、やっぱ俺のことだから、こぉんなに語っちまいやした。事実関係における誤りが御座いましたら、ご指摘下さいまし。

「聖戦士ダンバイン」を作って下さった、
スタッフの皆様、テレビ局の皆様、スポンサーの皆様。すべてのみなさまへ。

いい仕事をして下さって、本当にありがとう御座いました。

参考文献
『ロマンアルバム・エクストラ62 聖戦士ダンバイン』1984年 徳間書店
『聖戦士ダンバイン大事典』1984年 ラポート
『戦闘メカ ザブングル大事典』1983年 ラポート
『アニメック第30号 記念特大号』1983年 ラポート
『ダンバイン・ノスタルジア』2000年 ソフトバンクパブリッシング
『聖戦士ダンバイン 完全設定資料集』2006年 一迅社
藤子不二雄A著『愛…しりそめし頃に…』(坂本三郎先生が登場するのは第6巻)2004年 小学館
手塚治虫&13人著『トキワ荘青春物語』1995年 蝸牛社
など

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06/2/19(日)筆

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