月下の花

第43章 ガラリア、はじめてのお留守番


ガラリアが、フラオン王からの返書を持ち帰ると、ドレイクはさっそく、ミの国侵攻のため、軍の増強をはじめた。ゼラーナとダンバインも、今ごろはミの国に合流しているはず。お墨付きが手に入った今こそ、もろともに攻め落とす好機だ。機械の館は、フル操業で、新型オーラ・バトラーの量産体制に入っていた。

また、ドレイクは、ガラリアの配下で、めざましい働きをみせる平民出身の下士官、ユリア・オストークを高く評価し、参謀ミズルに号令を出した。

「のう、ミズル。これからの戦争は、騎士階級による名誉職ではなくなる。早急になすべきことは、平民からの徴兵だ。機械化された物量戦には、人手も必要であるし、人材も、広い目で探さねばならぬ。ユリア・オストーク下士官がごとき、人の上に立てる平民兵士を、多く登用しようではないか。」

ドレイクの発案で、バイストン・ウェルの歴史上、初めて、騎士階級以外の平民にむけて、大規模な徴兵令が出された。まず志願兵をつのると、俸給目当ての成人男女が、おおぜい、ラース・ワウにつめかけた。仕事のない者にとって、俸給がもらえる兵隊さんになれることは、収入面で、ありがたい政策だった。

さて、ゼット・ライトと、辛い別れかたをしてしまったガラリアは、あれほど足しげく通っていた、機械の館に、とんと足が向かなくなっていた。しかたがないことだ。

彼女は、ゼット・ライトに、未練があった。そうだろうとも、彼に強く、惹かれたからこそ!何年も仲良く、友人付き合いをしてきて、好きになった。恋人になってほしかった。なってくれるとみこんで、告白したら、断られてしまったのだ。私は、なんて恥ずかしいことを、したのだろう。そして、ゼット・ライトに、美しい愛妻がいたことへの、口惜しさ、狂おしい嫉妬。

どうして、私の恋は、いつも、こんなふうなのだ…。

いっぽう、ゼット・ライト本人は、社会的評価を、著しく低下させていた。あたり前のことだ。バイストン・ウェルの人々からは、改めて、異端者として侮蔑され、ガラリアの友人知人からは、よくも彼女をはずかしめたなと、恨みを買った。

同国、同州出身のトッド・ギネスからも、ゼットは痛烈な批判を受けた。うそをついていたのだから、当然である。特に、トッド・ギネスの論点は、クリスチャンとしての色合いが強かった。神に誓った結婚の事実を、ほかの女目当てで、ひた隠しにしてきたのは、罪深いと指摘された。返す言葉もない。

ガラリアにとっても、ゼットにとっても、不幸な結果だった。2人とも、顔を合わせなければならない場面があると、極力、目をそらしていた

そんな辛い時間が続く中、コンピューター・セクションが専門であるゼット・ライトは、新型オーラ・バトラー用オーラ増幅器の、製品化に成功した。機械の館に、さいきんでは珍しく、日参していたショット・ウェポンとともに、青い塗装のオーラ・バトラーを完成させ、名前はどうしようかと相談し、ビランビーと名付けた。

ショット・ウェポンは、とうぜんのように、ビランビーに搭乗するのは、騎士団長のバーン・バニングスだと言い、ふと思いつき、ゼット・ライトに、こう告げた。

「そうだ、ゼット。副団長のガラリア殿にも…」

名前を出されて、ビクッとふるえたゼットだが、ショットは、かまわず続けた。

「ガラリア殿にも、ビランビーと同系列の、オーラ増幅器を搭載したオーラ・バトラーを、作ってみたらどうだろう。ゼット、いつまでも、野蛮人どもの批判非難を、気にしていることはない。彼女には、おわびの意味もこめて、オーラ・バトラーを進呈するのがよいと思う。やりがいのある仕事ではないかな。」

ショット・ウェポンは、腹に一物あって、気を許せないやつだと思っていたが、さいきんはずいぶんと、ゼット・ライトの立場を思いやってくれる。ゼット・ライトは、ショットの提案に、うなずいた。

ガラリアが、エルフ城に行った日から、たった2日後。開戦準備が整うと、ドレイクは、各部署に通達を出した。明朝、ミの国へ出陣と!騎士団長バーン・バニングスは、ビランビーに搭乗し、最前線で全軍を指揮せよ。艦船ブル・ベガーは、オーラ・マシン多数を格納し、艦長ミズル・ズロムの指揮のもと、バーン隊に随行。

ドレイクは、執務室で1人、つぶやいた。

「ミの国王、ピネガン・ハンムには、きちんと、宣戦布告の書状を出しておいた。…調停の道も、用意してやった。かくまっておるニー・ギブンの、首を出せとな。さすれば、ミの国土と、軍隊を差し出すだけで、王家の家族は、殺さずに逃がしてやると。」

ピネガン・ハンム王が、そんな要求をのむわけがない。したがって、前面戦争となるのは、確定事項なのである。

そして、ガラリア・ニャムヒーは、お館様から、信じられない通達を受けた。ラース・ワウ本館で、通達書を受け取ったガラリアは、

『バーン・バニングス隊の留守中、守備隊長ガラリア・ニャムヒーは、聖戦士トッド・ギネスとともに、ラース・ワウの防備にあたること。』

「私が、留守番だと?!」

さらにある。『守備隊下士官ユリア・オストークは、ドロ隊を率いて前線へ。バーン隊を援護。』

「ユリアが、私より前にでるなどと!」

『なお、聖戦士トッド殿には、今後、専用オーラ・バトラーとして、青いドラムロを使用されたし、うんぬん。』

最後のほうは、もう読んでなかった。ガラリアは、通達書を放り出して、関係者がいそうな場所を、手当たり次第に、探し回った。

「バーン・バニングスはどこかっ!」

広場で、警備隊に指示をあたえていたバーンをつかまえると、ガラリアは食ってかかった。

「バーン!なぜ、名誉ある戦いに、私を連れていかないっ!私も行くぞ。」

アニメ『聖戦士ダンバイン』第8話「再び、ラース・ワウ」と、同じせりふを吐いたガラリアであったが、バーン・バニングスの反応は、アニメとは、まったくちがっていた。

「それがなあ、ガラリア。この配置は、お館様が、決められたのだ。わたしとしても、反対したのだ。守備隊下士官のユリアを前線に出して、隊長のおまえを出さないのは、おかしいとな。城の防備こそ、守備隊の下士官たちが適任だ。おまえとトッド殿は、攻撃力があるのだから、むしろわたしの隊にほしいのだ。だが、お館様がなあ…。」

ガラリアは、拍子ぬけした。では、言上すべきは、バーンではなくお館様だな。きびすをかえし、ガラリアは、ドレイクを探した。

ドレイク・ルフトは、参謀ミズル・ズロムをともなって、先日、ガラリアを、杖でバシバシたたいた中庭にいた。ガラリアは、また体罰をくらっても、かまわないと覚悟し、決死の表情で、お館様に訴え出た。

「お、お館様っ!なぜに、私とトッド殿が、留守居役なのです。前線に出させて下さい。バーン・バニングスも、申しておりました。私のバラウと、青いドラムロは、後陣に置いて出るには、惜しいと。」

するとドレイクは、ミズルに目配せし、子細はミズルから聞けいと言って、行ってしまった。ガラリアは、ミズルにかみついた。するとミズルは、

「よいか、ガラリア。ひじょうに、言いにくいが…こたび、おまえと、聖戦士トッド殿が、前線からはずされたのは…お館様からの評価が、下がったせいなのだよ。」

…えっ…なんだ、この、妙にリアルな、鬱展開は。

「なんと。私が、どんな悪いことをしたといわれるのです、ミズル殿。心当たりがありませぬ。トッド・ギネスは、どうでもよい。私の、なにが?」

ミズルは、出来の悪い娘を持ってしまった親のように、頭をかかえた。ハッキリ言わんと、こいつはわからんのだなと、こうべをふった。

「スキャンダルを、起こしたではないか。」

「すきゃんだる?なんのことです。」

「鈍感もたいがいにせい、ガラリア!ゼット・ライトとのことだ!」

一本の火矢になったがごとく、ガラリアの体は、しんから熱くなり、次いで、氷になったがごとく、キーンと冷え切った。ミズルは、バカにもわかるように、言ってきかせた。

「あの件は、そのほうばかりが、悪かったのではない。それは、お館様も、みなも、ようわかっておる。そもそも悪いのは、正妻があることを、ひた隠しにしておった、あの地上人だ。だがな、ガラリア。密通がうまくいかないことなど、世の中にはいくらでもあるが、おまえは、自分でそれを、みなにしゃべって回ったであろう。」

ガラリアは赤くなったり、青くなったりをくりかえし、だって、あれは、だってと、ウワゴトを言っている。ミズルは続けた。

「おまえの気持ちも、わからんではないのだよ。ゼット・ライトが、こんなひどいことをしたと、友達に言いつけ、告発したかったのだろう。…だが、そのような態度は、子供ならば許されるが、おまえは守備隊長だ!と、いうより、大人だ!恋愛上の失敗なぞ、自分の中で処理できんで、この先、なんとする。」

ガラリアは、さっきまでの剣幕はどこへやら、シュンシュンシューンと、ちっちゃくなり、その上、心の生傷を、グサグサえぐられ、泣きそうになっていたが、おまえは大人だとしかられているので、泣くまいと我慢していた。

「我が軍は、今、ミの国と一戦まじえようとしておるが、こういう時期に大切になるのが、情報収集、そして、情報漏洩防止である。先だっても、ダンバインを、ショウ・ザマに奪われた。あの折りより、ドレイク様は、我が軍のコンプライアンスを、徹底的に見直しされてな。おまえのスキャンダルも、守備隊長としては、多大な不始末だったのだ。交際そのものが、問題にされているのではないぞ。内密で済ませられることを、大事(おおごと)にしてしまった点を、おまえは反省せねばならぬ。」

あとなんか、グダグダ説教されたが、ガラリアは、ショックで、耳が遠くなっていた。そんな、まさか…あのことで、私が、こんな責めを負うなどと…ミズルの言葉が、こだまのように、遠くに聞こえた。

「そうそう、聖戦士トッド・ギネス殿は、お館様の期待に反して、青いダンバインを、一撃で落とされた。我が軍に、たったひとつ残っていたダンバインを、全壊させた件を、重く見て…」

もう、ガラリアは聞いていなかった。ミズルおじさんの説教が終わるのは、まだであろうかぁーと思いながら、終わると、ガックリ肩をおとし、トボトボと歩いて行った。

鬱だ。なんという鬱展開だ。これでは、原作アニメの私のほうが、よっぽどカッコいいではないか。この小説は、ひどい。なんで私が、そんな理由で、戦闘に参加させてもらえないのだ。コン、コンプ、コンプラ…昆布ライセンスって、なんなのだ。

第43章更新後書き

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