「月下の花」

第3章 ラース・ワウに花咲く日


 栗毛の馬は、今日の昼、この屋敷に来た時には、庭の立ち木に繋がれたが、今は、正規の馬屋で、ロゼルノ家所有の馬たちと並んでいた。ここに来るまで、悪路を疾走させられ、その上、走りながら、たてがみを何回も何回も引っこ抜かれた。栗毛は、辛い職務から解放され、安堵して、飼い葉を食んでいた。
 ニグ・ロウは、屋敷から立ち去る道すがら、紫色のマントの下から葉巻を取り出し、火を点け、深く肺に煙を吸い込んだ。ガロウ・ランの役目は、朝まで、もう、ない。美味い煙を吐き出し、くわえ煙草で、いずこか知れぬねぐらへと帰って行った。

ガラリアが、ベッドでアトラスに抱きしめられた頃、バーン・バニングスもまた、初体験の相手と、ベッドで抱き合っていた。こちらの方は、細かく描写するまでもない。というか、したくない。童貞の始末は、ロゼルノ夫人に任せておけばよい。バーンには、せいぜい、女性の扱いを学んでおいてほしいものだ。




 ベッドのガラリアは、今、両者とも、服を着たままで、くんずほぐれつ、しているが、脱ぐのは、どういったタイミングですればいいのだろうか?自分から脱ぐものなのか、彼から脱ぐのか、両者同時に脱ぎ始めるのか、などという、超初歩的な疑問を抱きながら、彼のされるがままになっていた。

 初めてであっても、何回目であっても、女には、熱して狂う自分を、外から眺めるもうひとりの自分が、常にいる。冷めている、ということとは違い、肉感と理性とが、二律背反せず、同時に存続するのである。ガラリアは、今、自分が体験する事象を、肌で熱く捉えながらも、こまごまとした観察ができている自分に、やけにチェック項目が多い自分に、本性と呼ばれる「女」を理解し始めていた。

アトラスは激しくキスをし、ガラリアの舌の短さを、また自分の舌で感じ、剣を充血させていた。ガラリアが心配しなくても、彼は熟練であるから、初めての少女の衣服を、上手に脱がしてくれた。

まず、ガラリアのブーツをくいくいっと取り、次いで靴下も脱がせ、自分のブーツと靴下も脱いだ。ガラリアは、(靴から脱ぎ、次は靴下が正式なのか…)と、かなり間違った解釈をしていた。正式ってあんた。

 アトラスは、ガラリアの腰にまたがったまま、息は荒いが、優しい笑みを浮かべながら、言葉はかけずに、次は自分の薄茶色の上着を脱ぎ、セーターも脱いだ。すると、初めて見る、若い男性の裸の上半身が、ガラリアの眼前に現れたのである。

<注:「月下の花」最大の敵。それは、ルーザでもビショットでもなく、バイストン・ウェルの連中が、みんな着ている、あの、とっくりセーターである。脱ぎにくい&脱がしにくいんだよ!と、この時、アトラスも思っていたに違いない>

 キャ…と、少女は、仰向けになりながら、後ずさりした!彼の、胸板!蝋燭の灯りで照らされた肌は、黄金色に輝き、当然なのだが、男の人にも乳首があることに、ガラリアはまた、改めて衝撃を受けていた。

男が、女の裸を見て興奮するのは知っていたが、女である私が、彼の裸身を見て、ヒャァーッ!とこう、腰が引けるほど、男の色気を感じてしまったことが、驚きだったのだ。

 アトラスの上腕から胸は、引き締まった筋肉が隆起し、着衣の時はスラリとして見えたが、実際はかなり、たくましかった。長年の武道で鍛え上げられた、若々しくもあり大人っぽくもある筋肉と、表面の肌のつややかさ。なんて、男らしい体格なのだろう。というか、大人の男ってこういう体なのだなぁ…彼も、ガラリアと同じく、着やせするタイプだった。

上背があり、顔が細めだと、着やせするものなのか?着やせは着やせを呼ぶのか?などと、ガラリアは、男の裸を見て、性的に興奮してしまっている自分を否定したくて、関係ないことを考えようとしたが、無駄だった。目が、目がぁ!彼の乳首に行ってしまうではないか!…こげ茶色だな…私のよりは、ずっと濃い色だ。よかった…なにがよかったのだぁ!私!

 と、ガラリアが、両手で顔の下半分を覆って、あわてふためいているのを、アトラスは満面の笑みで眺め、彼女の上にのしかかり、耳元で、とどめの台詞を、甘く優しい声でささやいた。ことさら甘く!

「…見せて…」

「いーいいい、イヤぁあーあーあーあー!!」

ここまで来て、イヤもへったくれもないのは、処女とて、重々承知なのだが、いざ、裸の彼を前にし、自分も見られて、この筋骨たくましい胸に抱かれるのだと思ったら、緊張とか羞恥心とかを、通り越して、自分がこれ以上、色欲におぼれることを、恐れたのだった。筆者はまったく恐れてないが。

 頼もしいアトラスは、彼女の悲鳴に遠慮なく、スルスルと、ガラリアのピンク色の上着をとってしまった。厄介なセーターをも、脱がしにかかったので、ガラリアはまたも、

「あぁ、い、いや、いやぁっ、は、恥ずかしい」

と訴えたが、彼がやめるはずもなく。彼女の両腕を上げさせて、タートルネックをぐいっと一気にめくると、ガラリアの素肌と、白いブラが剥き出しになり、本人は叫ぼうにも、首から上の頭部と両腕が、セーターで包まれる状態になっていたので、生地の中でウガウガともがいた。アトラスが、首の部分でひっかかっているセーターをぽんっと抜き取ると、彼の両腕の下に、両目を見開き、頬を真っ赤にし、青い髪の毛を振り乱した、上半身はブラだけのガラリアが、いた。

 ガラリアは、あぁーっ、と叫んで、即座に、両手で自分の胸元を隠したが、無駄だった。アトラスはもう、彼女のズボンを脱がしにかかっていた。胸を隠したって、下を脱がされたら、パンティーではないか!

「いやっ、いや!だめ、見ないで、アトラス!」

このへんになると、紳士アトラスも、くさい台詞なぞ言っている余裕がなくなっている。今、男の頭には、ガラリアのブラもパンティーも、とっとと取り去って、全て見て、愛撫して、既にガチガチに勃起している己が剣を、目的物に入れることしか、もう、ない。ないのだが、その目的貫徹のためには、どのような努力も惜しまないのも、また、男というものである。アトラスは、獅子奮迅、努力した。

 ブラとパンティーだけの、下着姿にされてしまったガラリアは、彼の手元から、枕の方へ、スルリと逃げてみた。枕の上に座り、両手で胸をおさえ、股が見えないように、両足を閉じて折り重ねて、かかとをお尻につけて、全身をキュッと小さくかためた。蝋燭が枕元にあるので、彼女の肌の光沢が際立った。青い前髪を乱した、かわいらしい顔はおびえ、眉を寄せ、睫毛をしばしばさせ、唇をぷるぷるさせ、全身は、ビクビク…と小刻みに震えている。手首と足首は、細く、対照的に、太ももやお尻は丸くふっくらと発達していて、必死で隠している乳房は、両手とブラからも、こぼれそうにふくらんでいる。素肌は、一点の曇りもなく、白く白く透き通り、震える足の爪は、天然のピンク色に染まっている。

 この女の子を見て、抱きたいと思わない男はこの世にいないだろう。

アトラスは、アア゛ッと、感嘆の声をあげ、2秒間、そのガラリアに見とれてから、おもむろに、自分のズボンを脱ぎだした。

バイストン・ウェルの、男性用下着は、地上で言う、ボクサーパンツの形で、丈が長めで、体にぴったり沿う形だった。アトラスの下着は、漆黒だった。黒い薄い生地が、ぱっつんぱっつんに盛り上がっていて、処女が、生まれてこの方、見たことのない物体が、黒い生地に包まれながらも、その正体を現した。昼間、硬くなった彼の剣を、服越しに押し付けられた時にも、大きいと思ったが、今、少し離れた所から、ズボンを脱いで見せられて、実物の大きさと形が、はっきりとわかった。

 ガラリアは、また…声にならない悲鳴が…ヒィィィイィあれはっ、あれは、なに?!あれが剣(大きさ判明)なのか!でかい!でかすぎる!入るわけがない!よしんば入ったとしても、痛くて死んでしまうだろうが!

 後年、アトラスのソレより、もっとでかい剣にお目見えして初めて、アトラスのは、標準より、やや大きめぐらいであることを、ガラリアは学習するのだが、なにせこの時は初めてなので、昨夜観察した、自分の穴に入れる用としては、でかすぎる、と思ったのだった。

でかすぎる彼は、ガラリアに寄って、

「おいで、ガラリア。」

と、抱きしめた。ガラリアは、さっきまでは、花を濡らしていたのだが、今、剣のでかさを恐れたあまり、蜜の放出が止まってしまっていた。ただ、抵抗はしなかった。

 アトラスは、ぜいぜいと息を荒くして、抱きしめたガラリアにまた口づけし、彼女の感じる首筋を吸って、ソプラノの

「あぁっ!あぁぁぁぁぁ〜ん、あん、あんっ!」

という喘ぎ声に酔いながら、これまた器用に、ブラの背中のホックをはずしてしまった。すると、サイズより小さいブラだったため、ガラリアのCカップの乳房は、ポムッとはずんで、はじけるように、彼の眼前に飛び出した。正常位で、自分の乳房と彼の顔を見下ろすと、ガラリアはもう、私は気絶するのでは、というくらいの恥ずかしさで、全身が硬直した。あぁ、ああ!チクビのすぐ隣りに彼の顔が!彼に、私の乳首を見られた!青い瞳を縁取る睫毛が、私の乳首に触れそう…恥ずかしい。しっ死にたい、でも死にたくない。

「ああ、ガラリア、きれいだ…あぁーっすごい」

アトラスは、ガラリアの乳房の、形のいいこと!丁度よく大きくて、ピンと上向きで。乳輪の直径は3,5センチくらい、色は薄いピンク色でつやつやとした光沢があり、乳首は、丸くかわいく突き出ている…こんなイイ乳房を、わたし以外の、誰も、まだ見たことも触ったこともないとは!男冥利につきる!と、熟練の彼をして感動させるほど、ガラリアの姿態は優れていた。

 当然のこと、アトラスは、猛然と、彼女の乳首にしゃぶりついた。ガラリアは、

「キーイヤァァァァァァァァァァァーアーアーア」

泣きそうだった。濡れた彼の唇で、敏感な乳輪全体をチュウチュウ吸われながら、濡れた彼の舌で、敏感な乳首をクルクルクルと、ころがされながら、片方の乳房は、優しく強く、揉みしだかれながら、指で乳首をつままれてクリクリされながら、その上、勃起した剣は、自分の白いパンティーにぐいぐい押し付けられ…何重苦だ、私。いや、「苦」じゃないが、耐えられない快感だ。同時に体中、こんなに、感じさせられて、どうしろというのだ!叫ぶしかない。さっき停止していた蜜は、またどんどんあふれてきた。

 アトラスは、しばらく乳房を愛撫していて、口を、引き締まったウエストに移動させ、

「あぁ、ガラリア!好きだ、きれいだ、君は、すごくきれい!あぁ、すごい!」

と、素直な感動を次々言った。それのひとつひとつを、ビクビク震えながらも、全て聞き取り、完璧に記憶する能力が、女にはある。ガラリアは、自分も何か答えなければ、と思った。

「あぁん…アトラス、あ、私…こわい」

その言葉を聞くと、彼は、すぐ顔を、彼女の目の前にもってきて、熱く口づけしてから、ささやいた。

「大丈夫だよ、わたしの大事な、かわいいガラリア!…君は、わたしを、好き?」

と、彼は、尋ねてきた。

ガラリアは、これから迎える行為の全てを想像して、怖さと、幸福とが、同じ行為を指すことの不思議を思った。そしてその相手が、この人でよかった、と思える自分は、幸運なのだとわかった。

「…好きだ、アトラスが、好き。」

すると彼は、ガラリアの潤んだ瞳を見つめながら、片手でパンティーをするっと脱がした。ああっ!とガラリアはひるんだが、アトラスの眼差しから視線をはずせなかった。白いパンティーは、途中、ガラリアの膝と足首でひっかかるが、彼はすっかり取り去ってしまった。

 ところで、さっきから、アトラスは、ガラリアと自分の、脱いだ衣類を、ベッドの下、床の上に、ポイポイと、無造作に投げていた。赤い絨毯には、ガラリアの着ていたものとアトラスのものが、ごちゃごちゃに折り重なっていた。女は、こういう点にもいちいち反応する。ガラリアは、そうか、脱いだ服をたたんで、邪魔にならない椅子かなにかに置いて、またベッドに戻っていては、興冷めするものな。アトラスはこういう仕草も、ワイルドで、男らしくて素敵、と感動していたが、男の方は、そんな演出効果なぞ、何も考えていないのだった。脊髄反射でやってるだけなのだ。

事後になってから、着衣しようとして、靴下の片方がみつからなくて、片足には靴下、片足は裸足の状態で、ベッド周辺を右往左往する男の姿は、たいへん間抜けである。

 とうとう、全裸にされてしまい、ガラリアは局部を見られる覚悟が…できなかった。

乳首は、まだ耐えられたが、<花>となると、自分の観察によれば、植物の花とは比較対照できないほど、ヘンテコな形で、用途不明な個所もあり、穴は小さすぎて…

いやっ?男性は、穴が小さいのが好きらしいぞ。ひょっとしたら、私の穴は、他の子に比べたら、大きかったり、しないか?!もしそうだったら、彼はガッカリするかも。ギャーアァーもう死にたいっ!そうだ、毛も。私の年齢にしては濃かったら、どうしよう!彼に、アー私が処女だというのをウソついてるとか、疑われたらーアーアー

 勿論、こんなガラリアの心配は、全て杞憂であって、いずれ、ベテランのおにいさんが、ちゃんと解説してくれるのだ。

 おにいさんは、ガラリアの、腰の上に目線を下ろして行き、硬く閉じている両足の、立てている膝をつかんで押し開けようとした。だが、ガラリアはその膝をガクガク震わせながらも、開けようとしない。ここでまた、おにいさんは、ことさら甘い声で言った。

「見せて…ガラリア…君の、花が見たい…」

「いやだぁぁッ!」

「見たいんだ…」

「あぁ、許して、アトラス!恥ずかしいぃ…」

灯りは、蝋燭3本だけなのだから、室内は薄暗くて、細かい部分なんて見えにくい。しかし、通常の処女の3倍、うぶなガラリアには、充分すぎるほど明るかった。

 するとアトラスは、強引に足を開くのかと思ったら、ククク、と低く笑って、右手で、シーツと重なっているガラリアのお尻を、指でスルスル〜と、なぞり始めた。ガラリアがヒクヒクッと下半身をのけぞらせると、同時に左手の指で、閉ざされた股の、三画形になっている、恥毛が覗いている部分を、ちょんちょんと、つつくのだ。

 ガラリアが、いくら、しっかり両足を閉じているといったって、男がぐいっとやれば簡単に開くのに、彼はわざと、処女なのに、自分から開かせるように、愛撫した。アトラスは、これまでのガラリアの反応から、彼女が、非常に敏感であることを、よくわかっていた。性感は、経験よりも、天賦の才能に拠ることが多いのだ。ガラリアは、触感の天才であった。

「キャ…い、いや…い、いじわる!」

「いじわる?わたしの、もうこんなに熱くなっている剣を、かまってくれない君の方が、ずっといじわるだよ」

なんだか、アトラスのキャラが変わってきたような気がするのは、筆者だけだろうか。否、ガラリアもそう思っていた。閲兵式での、朗々とした演説。宴会の時の、涼やかな話し方。私に告白した時の、落ち着き。それらがまるでなくなって、息遣いは、ハァ、ハァ、と荒く、語りかける言葉は、すっごくいやらしく、その表情は飢えた野獣みたいに激情し、さっきまでスベスベしていた彼の肌は、汗ばんでしっとりしている。

そして、そんな、彼の豹変ぶりを、嬉しいと思っている自分がいる。静かな物腰の貴方を、そんなに、興奮させてしまうほど、私は蠱惑的(こわくてき)だったのだ、と、知った自分がいる。

アトラスは、ガラリアから手を一旦放して、自分の黒い下着を、脱いだ。

 さてガラリアは、自分の花が、ヘンテコだと思い、まだ両膝をぴったり閉じたままで、とうとう、ナマの本物の剣を、初めて見た。

なんだこれは。

これのどこが、<剣>なのだ。こんな形の剣はないぞ。剣というより、ボンレスの全身みたいだ。

 ガラリアは、剣の、あまりの奇妙さに、素朴な興味を持った。

でかい、という感想は変わらないが、形が、人体の一部というより、別の生物が寄生しているようだ。先端の丸い部分が顔で、でっぱりの下が、長い胴体、みたいな。やっぱりボンレスだ、ボンレス。伸び縮みするしな。

剣の下部についているものが、これまた、なんともはや、なんだそれは。剣+ふたつ、と認識していたが、そうは見えない。その丸いものよ、ひとつなのか、ふたつなのか、合体しているのか分離しているのか、どっちなのだ。はっきりしろ。

そして、彼の剣の周りには、たいへん黒々とした茂みがある…いっぱい生えているな…私のよりは、ずっと濃い毛だ。よかった…なにがよかったのだぁ!私!

ふぅん、想像していたより、ずっと、かわいい形じゃないか、剣って。

だが、しかし。男って、こんなでかい、妙なものを股間に飼っていて、よく、普段、冷静に生活できるな!私だったら、こんな、随時でかくなるものが股間に装備されていたら、人生悲観するぞ!硬い椅子に座る度に、

…私の人生はこんなブヨブヨと供にあるのか…

と思って悲嘆にくれるぞ!見ている分にはかわいいが、自分に付いていたらヤダなぁー、と処女が考えていたら、全裸になったアトラスは、ガラリアの背後にまわって抱きかかえ、右手で、彼女の右の乳房をもみながら、左手で、閉じた股の三画形の部分をくいくいと押したり、太ももをなでたりした。ガラリアの、お尻の谷間には、ナマの剣が押しつけられて、先端が濡れているのが、わかった。何重苦だ、私。気持ちよすぎて、脚を、開きそう!更に、アトラスは、彼女の感じる首筋から肩を、強く吸い、耳に熱い息をかけて、問い掛ける。

「いい子だね、さぁ…力を抜いて、楽になってごらん」

「あうぅ…ん」

濡れて、震えて、助けを求めている私の花が、彼のささやきに応えてしまう。ガラリアは、愛撫のやわらかさに耐えかね、少しだけ、脚を開いてしまった。するとすかさず、彼は、前から指を、花の谷間へと侵入させた。

「あ、アァァァーッ!いや!いや!いやぁぁぁぁぁぁーッ!」

アトラスは、私自身でさえ、触り方がわかっていない、私の花の、どこになにがあるのかすっかり熟知している!これがまず、ガラリアの驚きだった。驚いて、くたぁと、すっかり膝をひろげてしまった。背後から抱きしめている彼の手指は、まったく迷わず、この堅固だった(過去形)要塞を攻略してゆく。まず外側の縦の溝を、丁度よい強さでスルスル押す。

「キャァーーーーーーーーッ!やめてーッ!、いぃ…いやぁ」

必死で訴えるガラリアの、苦渋に満ちた横顔を眺めつつ、彼女の乳房ごしに、上方から谷間を見ているのに飽き足らなくなった彼は、電光石火の早業で、彼女の、その前に、青い瞳を移動させた。かっ、彼の顔が、私のあそこに…しっ死にたい。でも死にたくない。

 アトラスは…急に、荒い息を止めてしまい、ひどく真面目な面持ちになった。口は半開きだが。ガラリアは、

(ヘンなんだ!ものすごい、ヘンなんだ!他の子と、違ったのだ!)

とショックを受けたが、彼女より、もっとショックを受けているのは、アトラスの方だった。

(これは…)

さっきからなでまわしているガラリアの素肌は、白く透き通り、表面はサテンのようにすべらかで、アトラスはその色と、触感に酔っていた。今、彼の眼前にあったのは、真綿のように白く柔らかい肌の中心に、ごくごくうっすらと、濃い青色の恥毛が、お花畑のように咲いて、谷間はぴったりと閉じ、上端のふくらみは、やや谷間に隠れるようにあって、非常に小さい種(たね)で…そして、<花>全体の色が、真っ白な両足に、燦然と映える、濃いピンク色で…しずくをふくみ輝いて…こぼれ落ちそうに咲いた<花>!

 アトラスは思った。わたしは、多くの<花>を見てきて、どの花にも個性があって、花というものは、見ただけで、ガッカリするようなものは、ひとつもなかった。そこに存在するだけで、いとおしいのが、<花>というものだから。しかし、見ただけで、これほど感動したことも、なかった。こんなに美しい<花>は見たことがない。こんなに美しい=恐ろしく欲情する=犯したい。突き通したい!この、硬く閉じた谷間を、初めて開けるのが、わたしなのだ。開通させるのだ。開通式。テープカット。紅白のリボンつきはさみ。またたくフラッシュ報道陣よ、日本道路公団よ、いざや開通式!ああ、わたしは、県知事になって、本当によかった…

 アトラスは、県知事ではなく、今はクの国の親善大使でもなく、ガラリアの処女剥奪全権委任大使である。ブツブツ言ってないで、とっととやっちまえよ。

 ガラリアは、まだ、ヘンなんだ!ヘンなんだ!と怯えていた。アトラスは、3秒間見とれた後、ガラリアには聞き取れない、小さな小さな声で

「きれいだ…」

と言うや否や、花まで1センチの距離に眼球を近づけ、両の手指で、強く弱く谷間を押して少しずつ開いた。

「いやあーーーっ!!お願い、見ないで、見ないで、お願い!いやっ!」

心地よいソプラノの悲鳴に酔い、アトラスは、ほんの少し動かしただけで、谷間から、愛液が、しとどに流れ落ちるその量にまた、嬉しい驚きを、見た。さっきの聞こえなかった「きれいだ」よりずっと大きな声で、ガラリアの花に向かって呼びかけた。

「ああ、もう、こんなに濡れて!すごい…」

ガラリアはといえば、初めてなのに、私の濡れ方はおかしいと言われたのだと思った。ほとんど、しゃくりあげながら、薄緑色の目にいっぱい、涙をたたえて、彼に、言った。

「…くぅ…ご…ごめんなさい…」

「なにを、謝ることがある?」

ごめんなさい、って、なんだ。君は、どうして、そんな悲しそうな顔をするのだ…アトラスは、この言葉を聞き、突如として、昨夜、ミズルから聞いた、ガラリアの生い立ちを思い出した。

今、君は至福の只中にあるのではないか。これからもっと、幸福になるために、生まれてきたのではないか。なにを怖れる?なにを悲しむ?この時、アトラスは、掌中にあるこの少女のことを、二日前に出会った時から、精一杯愛してきたつもりだったが、まだ全然、愛し方が足らなかったような気がした。君は、ずっとずっと、淋しかったのだね。今からは淋しがらなくていい。君を悲しませない。安心していいのに。なぜ泣く。なぜ、辛いのだ。

君は、今まで、自分が幸せになってよい、と、誰にも言ってもらえなかったのか?

「…ヘンなのだろう?おかしいのだろう?私の…」

「ああ、ガラリア!!」

アトラスのこの時の声量は、二日前の昼、ふたりが初めて出会った瞬間以来、最も大きな声だった。たまりかねて、ガラリアの恋人は、黒髪を振り乱し、青いまなこをカッと見開き、大声で、叫んだ。

「君は、美しいのだ!裸体が、肌が、全てが!声が、そして、この花が、なにもかもがだ!気が付かなかったのか?!いったい、どこの誰が、君を誹謗するか?君のなにを?こんなに、いとおしいのに、こんなに、こんなに…けなげなのに!!

君は、こんなに美しくなるまで、独りで耐えてきたのだね?ああ、もう耐えなくていいのだ!

君を傷つける者がいたなら、わたしが、許さない!

わたしの、大切な、花!ガラリア、君の名だ!!」

そしてアトラスは、珠玉の恋人の肩を両手で掴み、これまでで一番強い力で、抱きしめた。

彼の人(かのひと)の、熱い腕の中で、ガラリアは、震えを止め、今言われた言葉を、反芻した。恣意的にでなくても、アトラスの言葉は、彼女の心の、最も深い場所にある琴線に響いていた。ガラリア、それが、私の名。

 もう、ひとりぼっちでは、ないのだ。私の運命は、この人が、いや、この人と出会った私が変えたのだ。私は、生きる。生きていく。わかった。私という<独り>が、強くなるということは、他者の愛に応えることなのだ。彼の人を、愛することが、孤独と闘う力なのだ。自分はひとりぼっちではないことに気が付いて、初めて、己が<孤独>と向き合えるのだ。

 そして、ガラリアは、初めての恋人に、負けないくらい大きな、嬌声をあげた。

「愛している!アトラス!私を放さないで!」

「放すものか!おいで、ガラリア!君は…君の名を誇れ。」




 二日前に、ラース・ワウに現れた、クの大使アトラスの姿、上背のある黒髪、その美男子ぶりは、城内にいた多くの女性たちを、心ときめかせた。なんて素敵な男性でしょう。クの王室親衛隊長ですって。ご身分は高いし、お美しいし。そして独身なのですって。そんなささやきが、城内に満ちていた。アトラスに魅了されたのは、なにも、処女ガラリアだけではなかったのだ。

 一昨日の夜、宴会の際、そんな多くの、にわかアトラスファンの一人だった、ミュージー・ポウは、中庭できょろきょろしていたアトラスを見つけ、そそと駆け寄った。しとやかに、水色のドレスの裾を両手でかかげ、会釈した。クの大使は、群青色の髪をボブヘアにした、おとなしやかなご婦人に、極めて紳士的に答えた。

 ミュージィは、わたくしは、リムル様のクラヴサン教師で、父はお館様にお仕えしている騎士で、と、ゆっくりとだが、切れ長の眼差しに秋波を含ませて、話した。アトラスは、はきはきとした口調で、そうですか、先生なのですね、どおりで、所作に知性がにじみ出ておりますな、とかなんとか、言っていたが、遠目に、バーンと寄り添って話している<閲兵式で気になっていた少女>を見つけたので、

「あぁ、ミュージィ・ポウ殿。あちらの、副団長のバーン・バニングス殿に、ご挨拶せねばならぬゆえ、失礼いたしますよ。また後ほど」

と笑顔で言い、丁寧に会釈して、離れて行った。

 その後、バーン<たち>と話し込んでいるアトラスを見ながら、ミュージィは、あの方はバーン様と気が合ったようね、と思い、その場を去った。

 次の日、意中の彼が、バーンの付録と思っていた、入団したばかりの、ガラリアとかいう少女と、食事をしたり、今日の午後には、ふたりで遠乗りをしたり、といった光景を見聞きしてもまだ、

「あのお方は、少々、童女好みなのかもしれませんね。でも、あの幼い娘では、あのような大人の男性を、満足させることには、ならないでしょう。わたくしは、彼と正式にお付き合いするつもりは、ないのだから。アトラス、魅力的な方…」

23歳のミュージィ・ポウは、長身で、細身の、年上の男性が、たいへん好みだった。その唇は、山吹色の口紅で彩られており、つまり、自分の魅力を自覚している女性であった。彼女には、クの国の騎士では最高位にある彼と、あわよくば婚姻しようとかいう、野心はなかった。

「ただ…とても心が惹かれるのです。一夜でもいいですわ、お褥を頂戴したいだけ…」

ミュージィは、今、アトラスの客間の廊下まで、やって来ていた。静かに、静かに、靴音をたてずに、歩んで来ていた。うまい具合に、衛兵がいない。彼女の手には、赤い果実酒の酒瓶と、白い大輪の花が、一輪、あった。

 明朝、出立される身。わたくしのことは、一昨日の夜、お見止めになられているし、なによりも、大人同士ですもの…こうして、お酒をおすすめし、この花を、どうか、お受け取りになって、とお願いしさえすれば…大人の男ならば、受け取らぬことはないですからね。

 寝室のアトラスは、いよいよ、処女の<花>に、己が剣を、ゆっくりと刺し込んでいた。ガラリアの嬌声は、さっきからずっと、それは大きな声だったが、それがもっと声高な、絹を裂く悲鳴になったのは、理の当然だった。アトラスは、衛兵たちを下がらせておいてよかったな、これは、廊下まで聞こえてしまう、こんな素晴らしい声を、他の男には聞かせたくない、と、思っていた。

 客間の扉の前に立った時、ミュージィは、ひた、と止まった。室内から、音量はかすかだったが、はっきりと、それとわかる声が、聞こえた。それが誰なのかも、すぐにわかった。

そして、リムルの先生は、口元で軽く、薄笑いし、来た時と全く同じ歩調で、来た道を帰って行った。

静かに静かに、ミュージィは歩きながら、今日の昼、美容院に行き、ボブヘアを整えて、鳥の卵で髪のつやを出し、自分が一番きれいに見えると知っている、夜会服に身をつつみ、香水をつけ念入りにお化粧し、父の酒蔵から、一番高級なお酒をこっそり拝借し、城外の林で、白い花を手折り、夜陰にひそんで、誰にも見つからないように…しずしずと歩いてきた、その全ての努力が、たった今、水泡に帰したことを、心の中で、反芻することさえ、しなかった。しとやかな素振りのままで、ふと、白い石塀が視界に入った。

ふふ、と軽く、口だけで笑ってミュージィは、片手に持っていた酒瓶を、石塀に叩きつけて、割った。ガラス瓶はこなごなに、砕け散った。

白い石塀に、真っ赤な果実酒が飛び散った様は、夜目には、人の鮮血にも見えたかもしれない。

ガラス瓶が割れる音を、耳にしただけで目を伏せていたミュージィは、そのまま、もう片方の手にあった一輪の真白き花を、赤い鮮血の上に投げ捨て、また、ゆっくりと、その場を後にした。

「あんな小娘に、手を出すなんて、幻滅しましたわ。アトラス、そこもとには、もう用はありません。

…ガラリア・ニャムヒー…そなたの名は、覚えておいて差し上げる…」




「キャァーーーーーッ!!ああ、あぁ、いっいっ」

ガラリアは、最初、彼の剣の切っ先が、入ったらしいのに、痛くなくて、体の中心が「開いた」ような奇妙な感覚に襲われた。初めての時は痛いと、本で読んだのに、おかしいな?まだ入ってないのかな。さっき、アトラスは器用に、私の穴に人差し指を挿入して、それは全然痛くないどころか、めまいがするほど、快感だった。彼は微妙に指を動かして、私はたくさん濡れてしまって、濡れるほど彼は誉めてくれて、私のあそこの音がクチュクチュと聞こえて、私は、のけぞって喘いだのだ。しかしそれは、細い指であって、彼の剣は、もっとずっと太いもの。痛いはずだ。なのに、痛くない。体の「どこかが」張り詰めたような、ぽっかり開いたような、自分の身体なのに、自分のものでなくなったような、妙な感じ。

 だがそう思ったのもつかの間、アトラスは、亀頭を入り口に差し込んだ状態から、ググッと、奥まで一気に突いた。処女の硬い子宮口が開いて、初めて異物を受け入れた。ガラリアは、それが自分の子宮口だとは知らず、内部のなにかに、ひっかかったのは感知した。そしてそれが、初めて感ずる激痛となった。

「い…キャァァァァァァーッ!痛い、いたい!痛いぃ!!いや!痛い、痛い!いや、いやぁっ!やめてーーーーーッ」

ガラリアの子宮口は、アトラスが知っている女性の中では、最も硬くて、それはぱっくりと、男の感じる部分を咥えた。咥えて、放さない。逃げようと、後退すれば、花の内側全体の、細かい細かい無数のひだが、ヌルヌルまといつき、前進、後退を繰り返す毎に、蜜はあふれて、ますます、ねっとりと締め付けられる。

「痛い、痛いの、アトラスぅ…お願い、許して、お願い、死んじゃう!」

死んじゃうのはこっちだよ、ガラリア。君の花は、見た目だけでなく、内側の、この、よきこと!君は、どれほどの、名器なのだ。処女も熟女も中間も、たくさん抱いてきたが、君ほどの、イイものは…いかん…イキそうだ。イク?そんなバカな。わたしはそんな早漏ではないはずだが、彼女のモノが、よすぎるのだ!入れてまだ、2分くらいなのに、イッてたまるか。沽券に関わるわ。もっと感じさせてみせる。わたしも、もっと彼女の締め付けと湿りを味わいたい。頑張れ、こらえよ、我が愚息よ!

「あ、アトラスぅ、う、う、あん、あん、あぁん…いたぁい…アァーッ!あうぅん、アトラスぅーいやぁーん!」

そんないい声で、鳴かないでくれ!そんな切なげな目で、わたしを見ないでくれ。余裕がいっこもないのだ!今にもイキそうなのだ。ガー締めるな。アーまたそんなに濡らして!

 ガラリアから見ると、目を閉じ、真剣に眉を寄せ、ひたすら腰を動かすアトラスは、上手だなぁ、大人だなぁと感心させられる態度だった。男性って、こういう時に眼を伏せて、さっきまでケダモノみたいだった表情を、また真面目な面持ちに変えて、黙々と作業してくれるのだなあ。立派なのだなぁ。と、キャーキャー悲鳴をあげながら、もうひとりのガラリアは観察していた。

着眼点はいいが、解釈は間違っている。それは、イキそうなのを、ただただ必死にこらえるために、扇情させられるこなたの顔を見ないように、でも見たい、いや見るとイク、目を閉じても声が、ソプラノが、いい、発する言葉遣いが、昼間とまるで違うじゃないか、いやーんあはーんって君ぃ、グァーいい、見たくなって目を開けたら、うひゃー、たわわな乳房が、わたしが突く度に、ポムポムはずんで、ダメだ、イキそうだ!君が悪い!かわいくてかわいくて、しょうがないのだぁー、というアホの子なのだ。

 どれだけ時間が経っただろうか。ガラリアは、痛さが、段々やわらぎ、内部で、動く物体の形を感知できている自分に気が付いた。悲鳴が、自分の中で自然に止んだ。

「うぅぅん…」

と低く、息を洩らし、黙った。そして、瞬時も休まずのけぞり、もがき続けていた上半身と、両足の動きを、パタと止めてしまった。ハア、とまた息を吐いて、彼の眼を、じっと見つめた。上目遣いに、長く黒い睫毛を上げ、青い眉を少しつり上げ、潤んだ瞳の焦点を、彼の視線に合わせた。叱られてすねている時のような顔。この、ガラリアの、ほんの一瞬の、一睨みで、アトラスはとどめを刺された。

「ウォッ!」

と雄叫びをあげ、スルッと剣を抜いて、彼女のおなかの上に、溜まりきった液状の白いものを、放出させた。スルッと抜かれる際に、ガラリアは、はうっ、と一声鳴いた。そして、自分の体の表面に、ドクドクと出された白いのを、

(なんだこれは。)

と、例によって観察していた。なにこれ。と、おなかの上の液を、指で触ってみた。ねばっこいな。匂いがまた、例えようがないな。でも、いやな匂いではない。

 アトラスは、現金にも、すっかりさわやかな表情になっており、にこにこして、自分の白いのまみれになった恋人を、紳士的に、上品に抱きしめた。ふたりのおなかとおなかとが密着し、白いものはシーツに流れ落ちた。彼は、征服欲を満たされて、恋人にゆっくりキスをして、

「愛している…大事にするよ、ガラリア」

とささやいた。言われているガラリアは、うっとりと彼の背中に両のかいなを回してしがみつき、天井を見上げて、

(チェックが甘かった。アトラスに、避妊はどうするのか、と事前に確認するのを怠った。彼は、まあ、上手にしてくれたから、いいけど。それに、すっかり忘れていたが、本で読んだ、処女膜とは、存在したのか?それが破けると、鮮血が出るそうだが、今、出血しているのかな、どうなのだ。うむ、まだまだわからんことだらけだ)

などと、学究に余念がなかった。

 当然のことなのだが、ガラリアは、この時点では、まだ、「イク」ことを知らなかった。ようやく、物理的に姦通しただけである。「イク」のを知ってしまったら、事後に、このような冷静さなど、なくなってしまうのだが、彼女が、自らの絶頂の凄まじさを知るのは、まだ、ずっとずっと先のことだった。




 翌朝。ラース・ワウの広場には、いつも通り、ミズルが壇上に立ち、その横に栗毛の馬にまたがったバーンがいた。

朝礼に先立って、クの国の大使一行は、帰路についていた。その見送りには、ドレイクと、ミズルら少数の側近が立ち会っていた。馬を駆り、アトラスは、ドレイクたちを振り返りながら、領主の後方の、木立の陰に隠れて、こちらをじっと見つめているガラリアばかりを見ていた。

昨夜、1回目の後、様々なことをふたりで語り合った。ガラリアが興味を持った、処女膜のことも、教え諭した。それはね、内側に張り出している無数のひだのひとつに過ぎないのだよ。人によって、全く出血しないこともあれば、数回目でも出血することもある。ガラリアがタオルでふいてみたら、透明な液体に混ざって、ほんの少し、鮮血がついた。こんな程度なのか。もっと生理の時みたいに出るのかと思ったら。

そして、アトラスは、彼女の体を、タオルできれいにふいてあげ、ヒリヒリする花を、優しくなめてあげて、ガラリアが「用途不明個所」と思っていた種(たね)をも、舌で、ねろねろと感じさせて…その後2回、計3回いたした。一緒にお風呂に入って、恥ずかしがる彼女を洗ってあげた。そして抱き合って眠った。ベッドで目覚めて、クの大使が、もう出立せねばならぬ時刻になり、別れを惜しんだ。

ピンク色の制服を着た彼女は、17歳の朝を迎えて、クの国の、マントつき軍服を着た人の、胸にすがった。

「行ってしまうのだな」

「またすぐ、会えるよ、ガラリア。手紙を書くから。手紙で、国境に近い、わたしの別荘の位置を知らせるよ。来月下旬には、合同演習があるしね。その時にも会える」

「きっと、絶対だな。手紙は、間者を使うのか?」

「いや、正規の郵送で送る。君とのことは、密事ではない。誰にも承知させる」

と、ここで、アトラスは、苦渋に満ちた顔になり、ガラリアの青い髪をなで、非常に心配そうに、小さな声でうなった。

「…わたし以外の男を、そばに寄せないようにね」

「そんな!なにを言う!私がそんなこと、するはずがなかろう!」

ガラリアは、浮気するな、だなんて、なんという心外なことを言うのだ、と思い、激しく怒って言ったが、アトラスの心配は、彼女が意図的に他の男性と仲良くすることなどではなかった。

「うむ、わかっているよ。ガラリア」

そして、ふたりは、今日最後の口づけを交わした。

ガラリアは、馬上の恋人の姿が森に消えて見えなくなるまで、木立の陰から見つめていた。ドレイクたちがその場を立ち去っても、まだそこにいた。樹木に爪を立て、爪が痛むほど強く樹皮を掻きながら、つぶやいていた。今度いつ会えるのだ…

森へと行進する、クの親衛隊一行を、城壁の窓からじっと見つめている女性がもうひとり、いた。金髪を結い上げたドレイクの妻、ルーザ・ルフトは、窓の木枠に、赤く染めた爪を立てながら、心中でつぶやいていた。今に、思い知るがよい…

 ガラリアが、自室に駆け戻り、軍服に着替えている頃、朝礼はとっくに始まっていた。

バーン・バニングスは、整列した兵たちを、高い位置から見下ろし、自分と同じくらいの年齢か、年下の少年を、心中で指差し、数えていた。

(あいつと、あれ。あれと、そこにいる奴も。あれもそうだ、童貞だな。)

バーンは、ミズルが壇上で話している間もずっと、

(それと、あいつ。わたしよりは年上かもしらんが、モテない顔だ。あれも童貞。)

バーンは、数百人いる兵たちの末尾に、オレンジ色の軍服を着た、ガラリアがパタパタと駆けつけてきてもまだ、

(それから、と。最前列におる、こやつ。これもきっとたぶん童貞。フッ)

と、鼻で笑い、肩の前にかかる長髪を、耳元でかき上げ、

(どいつもこいつも童貞か。フッ、クズどもめ。所詮、わたしとは身の丈が違うのだ。フッハッハ。)

バーンは、首をふりふり、天空を仰いで、

(ま、わたしほどになると、昨夜は6回、いたしたわけであるし。)

それは主催者側の発表であって、6回中、1回は、入れる前に漏らしてシーツにこぼし、もう1回は、ロゼルノ夫人の胸の谷間にはさんだだけで出してしまったので、女性のカウントでは4回である。バーンは、遅れて来たガラリアに向かって、

「そこ!なにをしておるか。たるんどるぞ!」

と、居丈高に怒鳴った。

 ガラリアの隣りにいた、三日前一緒に入団した青年兵が、副団長の叱責によって、横に立っているガラリアに気が付いて見ると、彼は、ぎょっとした。目を見張った。

 そこに立っていたのは、軍服のそこかしこに覗く、白い白い肌が、陽炎のようにゆらめき、青い髪は、朝のしずくをたたえて輝き、長い睫毛に縁取られた薄緑色の瞳は、憂いを含んでゆれ、宝石が如く光り、バーンに叱られてムッとして、ヘの字に結んだ小さな口元は、真紅のルージュで彩られている!

これが、ガラリアか?彼女のことは、何年も知っているが、昨日までとは、まるで別人だ。この子…こんなにきれいだったか?それに、なにかとても、いい香りがする。惹き込まれそうないい香りが。

 彼女の眼差しには、凛とした、「自信」という名の光が差していた。ガラリアのしなやかな両足は、今、しっかりと土に根付き、ふっくらとした太ももの曲線辺りから、沸き立つ<花>の香りが放出されていた。ガラリアの愛液と、彼にもらった香水とが、渾然一体となり、大地から空へ向けて、芳醇に放たれていた。それは、正に、開花した、美しい<花>であった。周囲にいた、他の男たちも、彼女の香りに、焔立つ素肌に、燃えさかる赤い唇に、驚き、心の中で感嘆の声をあげていた。

一夜明け、17歳のガラリアは、今、ラース・ワウに燦然と咲く、一輪の花になった。



ところで、バーン・バニングスは、まだ、童貞の数を数えていた。

(あいつも童貞、こいつも童貞。フッ、愚民どもめ。なにしろわたしの剣は名刀であるからな。フーハッハッハッハ)

こっちの方は、元々、増長していた性格に、色ボケが加味されただけだった。

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